東都生協の理念

いのちとくらし、平和を守るメッセージ

 私たちは、東京を中心として24万人余の組合員が、平和とよりよいくらしの実現に向けて協同する消費生活協同組合です。いのちとくらしを守るため、設立以来45年にわたり、基本理念「産直・協同・民主」のもと、消費者と生産者とが直接手をつなぐ産地直結を基軸に活動を進めてきました。

 日本経済は緩やかな回復基調とされながら、実質賃金の低迷や非正規雇用の増加、少子高齢化の進行と人口減少、貧困と格差の拡大など先行き不安が高まっています。4月からは医療、介護、生活保護など社会保障制度が見直され、高齢者を中心に負担が増加しています。ガス・電気料金、食品・日用品などの相次ぐ値上げが家計に大きな影響を与え、支出を切り詰めた生活を強いられています。
 東日本大震災から7年が経過した今も、全国で7万人以上の方々が避難生活を余儀なくされています。福島第一原発事故では原因究明や最終的な責任の所在も曖昧で、事故収束の見通しすら立っていません。噴火や地震、避難への住民不安も置き去りに、核のごみ問題も解決しないまま、新規制基準の下で次々と原発が稼働しています。原発依存からの脱却と再生可能エネルギーへの転換が急務です。

 地球温暖化や人口増加などで食料や水資源の確保が世界的な問題となる中、日本は食料の大半を海外からの輸入に依存しています。一方で国内農業は担い手の減少・高齢化、耕地面積の減少、異常気象の常態化など、食と農をめぐる環境が深刻化しています。3月には種子法が廃止され、国民の共有財産としての主要穀物が多国籍企業に支配される可能性が生じています。
 農業や食の安全をはじめ国民生活に大きな影響を及ぼす環太平洋経済連携協定(TPP11)が3月8日に合意に至りました。昨年12月には、TPPを上回る自由化を受け入れる内容の日欧経済連携協定(EPA)が秘密裏に妥結しました。米国は二国間交渉で日本にさらなる譲歩を迫る動きを強めています。国民生活よりも多国籍企業の利益を最優先する貿易政策は、決して認めることはできません。日本の食料自給率の向上と、いのちを支える食と農を守る取り組みをこそ広げていく必要があります。

 戦後72年が過ぎ国内外に多大な犠牲を強いた記憶が薄れゆく中、戦争の惨禍への痛切な反省に立って制定された日本国憲法の基本原理が大きく損なわれようとしています。政府がイラクや南スーダンでの戦闘実態を隠し、憲法に違反した自衛隊派遣を行っていた事実が明らかになっています。相次ぐ公文書の隠蔽や改ざん、ねつ造は、民主主義の根幹を揺るがすものです。
 秘密保護法、安保法制に続く共謀罪(組織犯罪処罰法)の強行により立憲主義と民主主義の原則が根底から覆される中、改憲に向けた動きが強まっています。国民の権利を奪い情報を統制して悲惨な戦争に突入していった過ちを繰り返すことは許されません。国際的な緊張に対しては武力や抑止力ではなく、憲法の精神を生かし、平和的な手段をもって世界に貢献していくことが求められています。

 国民の平和なくらし、民主主義が危機に直面する今こそ、平和とよりよいくらしを協同して実現していく生活協同組合がその役割を発揮していく必要があります。私たちは、生産者と共に持続可能な社会を目指す「食の未来づくり運動」をはじめ、組合員の願いに寄り添った事業と運動を進めていきます。くらしの助け合い協同を通じて、安心して暮らせる平和な世界を実現に向け、取り組んでまいります。

2018年6月

東都生活協同組合