みんなの活動:これまでの活動報告

産直米を食べて田んぼを元気に-田んぼの生きもの宣言-

生協・産地・団体・米穀事業者・行政が協同して環境保全型農業を推進

2010.03.02

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その昔日本人は、たくさんの生きものを育む田んぼをまん中にくらしてきました。田んぼの周りには、里山や沼、川があり、それらが生き物たちの揺りかごとなって、命を育んでいたのです。

いつしか化学合成農薬と化学肥料に依存した農業へと変遷し、田んぼで当たり前に見かけたトンボやカエル、メダカたちが姿を消し、彼らが息づいていた風景が懐かしくさえ感じられるようになってしまいました。

今、農業が持つ多面的機能が見直され、生き物たちへ眼差しが向けられるようになってきています。たくさんの生き物が息づく田んぼを未来につなげたい、そんな願いを込めて、私たちは田んぼの生きもの宣言を行いました。



■たじり田んぼの生きもの宣言

私たちの未来に見えている風景は、四季折々に美しく姿を変える田んぼの中に、たくさんの鳥や虫、草花に囲まれて、食べる人を思いながら働く農家の姿です。そして、食卓で楽しく語らい、そこで育った生きものや米を作った人に思いを馳せることのできる消費者の姿です。私たちは、田んぼの生きものを一緒に調べ、話し合うことで、その未来が確実に訪れることを確認してきました。

私たちは未来の子どもたちにこのままの地球、このままの風景を残し、生物多様性を育み、持続可能な生産を支える水田農業を伝えていくために以下の宣言を行います。

◇安全・安心な田んぼを目指します
◇健全な土づくりを行います
◇環境に配慮した栽培技術の向上に努めます
◇地域の多様な生き物を育みます
◇複合生態系としての「里地・里山」の多様性を維持します
◇田んぼと周辺の環境配慮に努めます
◇地球温暖化防止に貢献します
◇地域の文化を守ります
◇人と人のつながりを大切にします
◇産直活動を広げます

※上記は「たじり田んぼの生きもの宣言」の抜粋です。詳しくはこちらをご覧ください。

親子で生きもの調査 たんぼの生きもの 05%20kansei.jpg
たんぽぽ 田んぼに咲く花 いなご


■たじり田んぼの生きもの宣言マーク

たじり田んぼの生きもの宣言マーク このマークは、生物多様性によって人と田んぼが支えられていることを表わしています。背景の色は、水の青、植物の緑、大地の茶です。私たちが目指すべき「なつかしい未来」を象徴しています。

■産地の取り組みを応援します



生きもの調査 かえる 田んぼの調査

2009年12月15日、JA新みやぎ・田尻支店(宮城県)で、「たじり田んぼの生きもの宣言」が発表されました。

田尻地域では30年ほど前から農薬の使用を抑えた環境保全型農業を進めてきました。10年ほど前からは田んぼの生き物調査を行い、生産者自身が田んぼの生き物たちに目を向けるようになり、5年前からは消費者も一緒に調査を行っています。

そして2009年4月、産地や生協のみならず、流通や精米を担う米の卸業者や行政も加わって、田んぼの生き物調査プロジェクトが発足し、4回にわたる定期的な田んぼの生き物調査と数回の話し合いを経て宣言に至りました。これは、日本で初めての、田んぼの生き物と共生した農業を進めるための宣言となります。


■田んぼの生きもの調査が形に



田んぼの風景 白鳥 マガンの飛び立ち

カエルやアメンボ、クモなどが害虫を捕食し、イトミミズや微生物が豊かな土を作る。そんな生門門ものたちの力をうまく利用することで、農薬や化学肥料の使用を抑えることができます。

田んぼの生きもの調査を行うことで、いろいろなことが分かってきました。冷害の年はトンボの羽化の時期が遅れること、使う農薬の種類によってトンボの数が異なること――まさしく生き物たちは、科学的なデータよりも多くのことを語ってくれます。

生き物を育む取り組みは少数の生産者や一部の田んぼだけで行うのではなく、田尻のように地域全体で取り組む必要があります。田尻の生産者の皆さんも、これまでの生きもの調査や、農法への応用など地道な活動が消費者に広まるということで、今回の宣言に大変期待しています。


■生産者からのメッセージ


佐々木陽悦氏 生産者・田尻地域田んぼの生きもの調査プロジェクト実行委員長

田んぼの生きものが食の安全と環境を語る

佐々木陽悦(生産者・田尻地域田んぼの生きもの調査プロジェクト実行委員長)

宮城県大崎市田尻地域の環境保全型農業は、30年ほど前の水稲の空中散布中止やダイオキシン系農薬排除の運動に始まります。10年ほど前、6月の水田をミジンコを大きくしたような生き物がたくさん泳いでいることに気付きます。「タマカイエビ」です。

ユスリカを食べにツバメが乱舞し、6月末にはメダカやフナの稚魚が泳ぎ、夜には稲穂を登ってトンボの羽化が始まります。

生き物はウソをつきません。生き物調査をすることで、化学合成農薬や化学肥料を削減した栽培方法が生き物の種類や数に反映するなど、生き物が食の安全や環境のモノサシとなることが分かってきました。

生協の組合員の皆さまと一緒に始めた調査活動の中から「田尻地域田んぼの生きもの調査プロジェクト」が結成され、生きものが豊かな田んぼで生産された米に、全国で初めて「生きもの宣言マーク」を表示することを決めました。

今年2010年は国連が定めた「国際生物多様性年」です。農業は人間の生存にとって必要な食料の生産を行うと同時に、地球上の多様な生きものの生息環境を保全します。このような環境保全型農業を一緒につくっていきましょう。


■「たじり田んぼの生きもの宣言マーク」が付く産直米



宮城ひとめぼれ(田尻)5Kg 無洗米宮城ひとめぼれ(田尻)5Kg 無洗米宮城まなむすめ5Kg

たくさんの生き物を育むように、地域全体で環境に配慮した農業に取り組んでいる宮城県田尻の産直米に「たじり田んぼの生きもの宣言マーク」を付けます。 ※商品名・価格などは2010年3月2回時点のものです。

高台から見た田尻地域(宮城県大崎市)

高台から見た田尻地域(宮城県大崎市)