みんなの活動:これまでの活動報告

学習会「日本の畜産・酪農業の現状と東都生協の産直」を開催しました

組合員と生産者が共に環境の変化や課題に向き合い、産直の在り方を考えました

2018.04.13

東都生協は2018年2月14日、さんぼんすぎセンター会議室にて「日本の畜産・酪農業の現状と東都生協の産直」をテーマに学習会しました。

講師として千葉北部酪農農業協同組合の小野 功さん、信川 幸之助さん、東都生協の小俣徹職員が登壇。当日は組合員など29人が参加しました。

TPPや日米貿易交渉(FTA)など際限のない貿易自由化と輸入食品の安全基準の緩和、国内食料生産基盤の弱体化など、日本の畜産・酪農業はさまざまな問題や課題を抱えています。

開会の学習会は、組合員と生産者が互いに、それぞれを取り巻く環境の変化や課題に向き合い、東都生協の産直の事業と運動に理解を深める機会として開催しました。

千葉北部酪農農業協同組合・小野さんのお話
はじめに、千葉北部酪農農業協同組合・小野さんが報告しました。以下は報告要旨です。

TPP加盟による影響試算は、牛肉は格付け4~5等級の国内ブランドは残り、3等級以下は一部を除き輸入牛肉に置き換わる見込みです。輸入牛と競合する乳用種などが、特に影響を受けることが考えられます(用途・特色のある牛肉を除く)。

乳製品は、鮮度が重視される生クリームなどを除き、外国産に置き換わってしまう公算が大きく、飲用乳についても加工から漏れた北海道に置き換わり、都府県の飲用乳は大きな打撃を受ける可能性があります。

千葉北部酪農農業協同組合の戸数および牛乳生産量は、生産者の移籍などに伴い減少してきました。また、妊娠牛の異常高騰など生産費が生産費を圧迫し、搾乳牛の減少にもつながり、乳量も減少していく構造が長らく続いています。

割合は異なりますが、これは全国的に見られる現象であるとともに、メガファームの台頭が酪農現場を席巻しています。大型化、一極化(北海道)の動きが見られるのが近年の酪農業の傾向です。

日本国内の肉牛飼養頭数は2010年を境に、大型牧場の牛部門撤退(廃業)に伴って減少傾向にあります。さらには2010年の九州での口蹄疫発生、2011年の東日本大震災と列島を災害が襲い、仔牛の一大産地が崩壊し、全国的な仔牛不足につながりました。畜産業でも畜産クラスター事業(※)による大型化が進んでいることは酪農業と同じ現状です。
畜産クラスター事業:畜産農家をはじめ、地域の関係事業者が連携・結集し、地域ぐるみで高収益型の畜産を実現するための体制づくりのために、国(農林水産省)が補助金を交付する事業

今日さまざまな要因(経済的要因・天災)が生産状況を圧迫し、負のスパイラルへ落ち込んでいく構造になっています。

国内の畜産・酪農業を未来につないでいくためには、生産者と消費者の相互理解に基づく消費行動が重要です。安全・安心でおいしい牛乳・牛肉を次世代に継承するためには、いま国産農畜産物の消費拡大を進めることが必要です。行動につながってこそ、命を次につなぐことができます。

千葉北部酪農農業協同組合は、「八千代牛」「八千代牛乳」を通じて、東都生協組合員の皆さまと共に、国産農畜産物の担うものを未来につないでいける産地になっていきます。

次世代を担う生産者のお話(千葉北部酪農農業協同組合「八千代黒牛」生産者)
先代の後を継ぎ、今の肉牛生産を行う次世代は、「継続して生産していけるのか」「将来生計を立てていけるのか」など、非常に大きな不安を抱えています。いま私たちの目の前にある"大きな不安"を"大きな希望"に変えていくためにも、組合員の皆さまの"消費行動"という応援を、よろしくお願い申し上げます。

次世代を担う生産者のお話(千葉北部酪農農業協同組合「八千代牛」生産者)
今日までに肉牛生産はBSEや口蹄疫、そして震災に伴う放射性物質による汚染など、廃業と隣り合わせの状況を乗り越えてきました。それは私たちが育てた牛を"おいしい"といって食べていただける東都生協の皆さまがいてくださるからです。

現在は、生産した牛肉を皆さまにお届けすることが難しくなるまでに、仔牛の減少、そして飼料穀物の高騰が長く続いています。皆さまの"おいしい"の後押しを励みに、多くの次世代が頑張っています。私たちは今までと変わらないおいしい牛肉を生産していきます。

続いて東都生協・小俣職員が、独自の有機質資材「米の精」と畜産・酪農との関わりについて報告。

「米の精」は、おいしさと栄養を両立させた産直米「金芽米(BG無洗米)」などの精米過程でできる肌ぬかを再利用した有機質資材です。今まで廃棄されていたこの栄養豊富な「米の精」を、産直青果物の肥料や畜産飼料に活用することで、おいしさと環境保全を両立したブランドとしています。
※米の精:「米の精」は、地球環境の保全と循環型農業を目指す取り組み。産直米「金芽米」などを製造するBG無洗米機は東洋ライス㈱が開発。研ぎ汁の素になる肌ぬかの粘性を利用し、でんぷん層(白米部分)とぬか層の境目にある亜糊粉層(あこふんそう:栄養とうま味成分が豊富)を傷めずに肌ぬかだけを除去します。米の精は、①研ぎ汁による水質汚染を防止し、汚水処理場の電力消費(CO₂)を削減できる ②コメの健康成分の流失と劣化を防ぐ ③コメの食味の劣化を防ぐ ④環境に有害な研ぎ汁を有効資源として活用する ――機能を備えています。

環境保全、循環型農業の実現を目指す考えに賛同いただいた産直産地では、以下の東都生協商品で「米の精」を配合した飼料の給餌が始まっています。

「八千代牛」   2016年1月より、日齢約300日以降、飼料に「米の精」を3%配合
「八千代牛乳」  2017年10月より、乳牛飼料に「米の精」を3%配合
「かぞの豚」   2017年4月より、日齢約120日以降、飼料に「米の精」を3%配合
「太陽チキン」  2017年4月より、日齢約60日以降、飼料に「米の精」を3%配合


参加者から生産者への質問も受けながら、交流と「八千代牛乳」の試飲や「八千代牛」の試食を行い、東都生協のこだわりや魅力、商品の良さを実感できた学習会となりました。

<参加者の声>
  • 今まで日本の畜産・酪農についてあまり考えたことがなかったので良い機会となりました
  • 産地が置かれている現状は厳しいものがありますが、これまで築き上げてきた酪農業の伝統を断たれないように消費者の理解も深めながら頑張っていただきたい
  • 畜産・酪農の現状がこれほど厳しくなるとは考えていなかった。私たち組合員が今後、今までのように安全で安心な商品を手に入れられるか不安に思う。試食の肉がとてもおいしかった。牛肉を利用することは最近少なくなってきたので、今後はぜひ注文したい