みんなの活動:これまでの活動報告

「私たちのくらしはどうなる?」TPP学習会を開催

TPPに加盟すると、くらしや食の安全はどうなるのかを学びました

2013.07.22

講師の内田 聖子氏(NPO法人アジア太平洋資料センター)

講師の内田 聖子氏(NPO法人
アジア太平洋資料センター事務局長)

質問には一つ一つ丁寧に説明

質問には一つ一つ丁寧に説明

日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加を2013年7月23日に控えた7月11日、東都生協はTPP学習会を開催しました。講師は、NPO法人 アジア太平洋資料センター(PARC)事務局長の内田聖子(しょうこ)さん。TPP加盟が私たちのくらしにどのような影響を及ぼすか、TPPの本質とその目的について、分かりやすくお話しいただきました。会場の東京都消費生活総合センターには、東都生協組合員など約50人が参加しました。

はじめにTPPの性格として「例外なき関税化によってあらゆる品目が自由貿易の対象になり、その範囲も極めて広い」と指摘。TPPは農業・食料分野だけの問題ではなく、食品添加物や残留農薬、遺伝子組換えなど食品の安全基準をはじめ、医療、保険、金融、労働、知的財産権など「非関税障壁」の規制緩和・撤廃も含まれており「私たちのくらしに欠かせないもののほとんどを完全自由化しようとしている」と話しました。

今でも日本の農産物の平均関税率は12%と、世界的に見ても低水準ですが、TPPでさらに自由化が進めば、国内農業は大打撃を受け、農業生産は4.1兆円減少し、自給率は現在の40%から14%に低下するという農林水産省の試算も紹介。

他のTPP加盟国は高い食料自給率を維持する一方、世界的な人口増加や気候変動、新興国の食の消費変化や国際食料市場への投機資本の流入など、多くの不安定要因が存在する中で国内農業が壊滅すれば、日本として食料の安定確保が難しくなることは目に見えています。

TPPが進めようとしている「貿易自由化」「関税の撤廃」は、日本のメディアでは「海外から安いものが入ってきて節約につながる」といった側面から報道されることも多いのですが、内田氏は「世界に貧困と格差が存在する中、これ以上貿易自由化を進めれば、先進国の大企業や投資家にとっては都合が良くても、貧困がさらに拡大することは1980年代以降の自由化の流れを見ても明らか」と指摘します。

また、TPPに加盟すると「日本の法律や制度よりTPPによる取り決めが優先され、国家の主権が、多国籍企業の利益に従属させられることになる」と警告。特に「ISD条項」というルールでは、TPPが国と国との協定であるにもかかわらず、投資家が直接国家を訴え、賠償請求ができることになっています。訴える先は日本の裁判所ではなく、アメリカの影響が強い世界銀行傘下の国際仲裁委員会で、しかも審理は全て非公開とされます。

このように、TPPは加盟国の中で圧倒的な経済力を持つアメリカが主導し、アメリカの多国籍企業に都合の良いルールを持ち込む場になっている実態を明らかにしました。TPP加盟によって利益を得るのは一部の大企業に過ぎず、国そのものが市場化・営利化され、企業利益を優先する社会へと、国家のあり方自体が変わってしまう危険性を秘めているのです。

さらに、一度TPP交渉に参加してしまえば途中で脱退することは難しく、日本が主張する農産物の"聖域"など全く関係ない状況になってしまうこと、またこうしたことについて日本のマスメディアが一切触れようとしないことにも言及。日本は、TPP交渉が進んだ中での途中参加となりますが「交渉過程は秘密で、情報を得ることも困難」と語ります。国民に内容が知らされないまま、交渉が進められる状況を、内田氏は「商品名や金額、支払い方法も分からない買い物」に例えます。

参加者からは「何一つメリットがないことが明らかなのに、なぜ日本政府がこうまで急いでTPP交渉に参加するのが分からない...」との質問も。

これに対し内田氏は「日本は戦後一貫してアメリカに従順で、軍事的な結びつきが強い上、昨今の領土をめぐる情勢などもあって、国民の意見よりも日米間の関係強化を重視している側面がある」と解説。私たちにできることして、情報収集に努めるとともにTPPの持つ意味について広く知らせ、反対の世論を大きくしていくことの重要性を強調しました。

東都生協は2011年よりTPPに反対してきました。それは、TPP加盟が国内の農畜水産業や地方経済に深刻な打撃を与えるのみならず、食の安全・安心やくらしそのものを脅かすものだからです。東都生協は引き続き、TPPに反対する取り組みを進めていきます。