公開監査

公開監査レポート

北の大地で日本の食を支える生産者たち

JAつべつ

2009年1月23日~24日

 1月23日、24日の2日間、北海道津別町にあるJAつべつで「産地交流&公開監査」が開催されました。1日目、監査人は事前監査をする一方、参加組合員は北海道ならではの体験や生産者との交流をしました。2日目の公開監査では約60人が参加し、産地での品質管理のしくみを確かめ、生協と産地がお互いへの理解を深めることができました。
 JAつべつは、厳しい農業情勢の中、日本の食料を支えている北海道で、安全・安心を心がけ、日々農業に取り組んでいることがわかりました。

女満別空港から見た雪景色

スケジュール(実績)
2009年1月23日(金)

【監査人による事前監査】

監査人…有機JAS検査員1人、ほかの産地から1人、東都生協から組合員2人、職員2人の計6人

10:30 産地からの説明・質疑
13:30 倉庫(玉ねぎ、馬鈴薯)・選果場(玉ねぎ)の視察
14:50 生産者宅にて文書の確認、倉庫の視察
16:35 事務所にて文書確認
監査人以外の参加組合員は、製糖工場や有機酪農の見学、そばうち体験などを行いました。

ビート(てんさい)を原料に砂糖を作る製糖工場の見学

有機牛乳を生産している牧場で乳しぼり体験

2009年1月24日(土)

【公開監査】

10:30 開会あいさつ
【JAつべつ、東都生協】
10:50 JAつべつからの説明
11:10 監査人から事前監査報告
12:10 質疑応答、意見交換
12:45 閉会あいさつ
【東都生協、JAつべつ】
12:55 終了

JAつべつの取り組みを説明する有岡部長

スライドを使って事前監査の報告をする監査人

消費者の力が農業を支える ─ 心配される北海道の農業 ─
 開会に際して、JAつべつの山下組合長からあいさつがあり、北海道農業の現状と公開監査への期待が述べられました。現在交渉中の「日本・オーストラリア経済連携協定」が締結され、オーストラリアからの農産物の関税が撤廃された場合、日本の農業、特に北海道の酪農や農業は壊滅的な打撃を受けてしまうとのことです。いくら北海道の農業が大規模とはいえ、オーストラリアの経営規模には太刀打ちできるわけもありません。日本の農業の未来に希望が持てるよう、私たちはしっかり応援していく必要があります。
 公開監査は産地の安全・安心な農産物を生産するしくみを確かめるだけでなく、産地が直面している現状への理解を深め、お互いのきずなを強める取り組みでもあります。
化学合成農薬と化学肥料を半分以下に ─ 特別栽培農産物の取り組み ─
 1日目に監査人による事前監査が行われ、2日目の公開監査ではその報告がされました。JAつべつは東都生協に玉ねぎ、じゃがいも、にんじん、かぼちゃを出荷していますが、いずれも特別栽培農産物で、一般的な作り方に比べて化学合成農薬と化学肥料の使用を半分以下に抑えています。監査人が手分けをして、生産者が農協に提出する栽培記録の確認や、その栽培記録と生産者が日常的につけている作業日誌との照合を行った結果、約束どおりに栽培していることが確認できました。ただ、栽培記録に記入漏れなど一部不備があったので、そのことについて監査人から指摘がありました。一方、農薬の管理がきちんとしていることが賞賛点としてあげられました。農薬は鍵つきのロッカーなどに保管され、各生産者は在庫管理表をきちんとつけ、無駄や使用の間違いを防ぐような管理がされていました。
栽培記録…畑ごとの種まきや収穫、肥料や農薬の使用などの記録

事務所でのJAつべつから聞き取りや文書の確認

生産者のお宅にうかがって、生産者が持っている記録を確認

入荷から出荷までしっかり区分 ─ 混ざらない仕組みづくり ─
 約束どおりに栽培しても、収穫後に一般の野菜と混ざってしまっては意味がありません。そこで、事前監査では、生産者が農協に出荷した野菜が他と混ざることなく、きちんと管理されているかについても、記録や選果場の視察で確認しました。生産者から出荷されたじゃがいもや玉ねぎは大きなコンテナに入れられ、農協の倉庫に保管されます。コンテナごとに、生産者、栽培区分、収穫した畑などを記載したタグがつけられ、置き場所も決まっていました。保管されている農産物は注文に応じて出荷されるのですが、機械と人の流れ作業により不良品は取り除かれ、規格ごとに選別され、ダンボールにつめられます。セットされる農産物の栽培区分(特別栽培や一般栽培など)が変わる際には、いったん機械を止めて、箱詰め途中のものを取り除くなど、栽培区分の異なる物が混ざらないよう、作業していることを確認しました。

倉庫で玉ねぎの保管状況を確認

選果場にて、選別状況を確認

共に歩んだ産直の歴史 ─ 生産者と消費者のつながり ─
 公開監査では意見交換も行われ、参加者からの「産地のがんばりは理解できたが、一方で東都生協との取引量が減っている。組合員に産地の取り組みをもっと伝えるべきでは」との意見に、東都生協の商品部の職員から「最近は、根菜類(いも、玉ねぎ、大根、にんじんなど)の利用が落ちてきている。この間、生産者カードのカラー化など、いろいろ工夫している。これからも努力していきたい」との回答がありました。さらに、参加者からは「今、蒸し料理がはやっている。じゃがいも、玉ねぎ、にんじんは『蒸す』という料理によって、簡便さ、おいしさを実感しつつ、今の時代にあったヘルシーさを強調できる」との提案もありました。
日本の食を支えている北海道の農業。私たちが国産の野菜を安心して食べ続けるためには消費者として何ができるかを考えさせられました。
 JAつべつとは、パンの原料となる小麦粉の取引からはじまりましたが、そのパンがなくなり、現在は野菜だけの取引となっています。うれしいことに、JAつべつで生産された小麦を原料としたパンの開発に着手するそうです。単品だけの取引ではなく、地域丸ごと産直のつながりが期待できます。

参加者からも質問や意見が出されました

会場ではさまざまな資料の閲覧もできました

参加者の声 ─ 組合員のメッセージカードから抜粋 ─

今回参加した方に書いていただいた産地へのメッセージカードから、特徴的な意見をを抜粋します。

「夕食でいただいたじゃがいもと玉ねぎのグラタン、夕食の中で一番おいしかった。作った人の顔を見ながら、その土地でいただけたことがとても嬉しかった」「今後は、商品案内に『つべつ』の商品を見つけたらなるべく購入し、生産者カードへは必ずメッセージを書いて、今回の思い(出会い)をつなげていきたい」「安全・安心のために作物を作り続けるためには、組合員が買い支えることで再生産を保証することだと感じた」

監査を終えて ─ JAつべつ 経済部長 有岡敏也 ─

 われわれの産地JAつべつは、平成3年から東都生協とお付き合いしておりますが、開始から10年間は順調に取引数量の拡大、さらには、交流事業を積極的に進め、常にチャレンジ精神で対応してきたと自負している所であります。 生産者意識を高いレベルで持続するために、次のステップとして、平成13年から始まった公開監査制度を新たな目標として位置付け、遅くなりましたが平成19年から準備を進め、今回の公開監査の実施となりました。
 監査人及び東都生協理事、職員の方々には、前日の事前監査から長時間にわたり、JAつべつの取り組み状況を含め熱心に監査をしていただき、厚くお礼申し上げます。
 当たり前のことをきっちりと記録に残し、普段対応していることをありのまま見ていただき、問題点があれば次につなげるべく、どう改善するかが産地としての力と考えております。
 産地としては、皆さまからいただいた貴重なご意見を参考とし、新たな目標を持ち生協との関係強化を図っていきたいと考えていますので、今後ともよろしくお願いいたします。
 東都生協におかれましても、運動の原点に帰り生産者、消費者共に共存共栄できるように組織力の発揮をお願いいたします。
激変の時代でありますが、今を生きているわれわれががんばるしかありません。共にがんばりましょう。

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