公開監査

公開監査レポート

商品を確かめる取り組み「安心が確信になる公開監査」すすめています

紀ノ川農業協同組合

2003年9月11日

 東都生協では、商品を確かめる取り組みの一つとして公開監査に取り組んでいます。2002年度は5産地で開催し、2003年度最初は、紀ノ川農協での開催となりました。組合員も監査人となって、産地の取り組みを確認する「公開監査」。今年もどんどん行います。

公開監査では前で監査人と産地がやり取りをし、それを参加者が見守ります

地域の農業再生をめざす 紀ノ川農協

参加者一同、生産者の畑を見て栽培状況を確認します

 去る9月11日に、みかんや柿といった果物をはじめ、玉ねぎなどの野菜の産地としてもなじみの深い紀ノ川農協(和歌山県)において、約100人が見守る中、公開監査が行われました。確かな農産物を生産し、間違いなく出荷する取り組みが確認されたと同時に、地域の農業再生まで見据えた事業展開という「厳しい農業情勢の中で新しい挑戦をしていく」紀ノ川農協の姿勢が明らかになりました。

約束通りの生産と区分管理が確認されました

産地が持っているさまざまな文書によって、産地の仕組みを確認します

 公開監査では、東都生協との約束(農薬の散布などの栽培上のきまり)通りの生産がされていることや、生産されたものが他からの混入がなく間違いなく東都生協に届いていることを確認するため、提供された資料をもとに、監査人(今回は専門家1人、他の産地から2人、東都生協組合員3人、東都生協職員2人の計8人)が産地への質疑を行います。約束を守る仕組みがあるか、またその仕組みがきちんと機能しているのかを記録や聞き取りにより確認するのです。その結果、おおむね問題がなく、約束も守られており、さらなるレベルアップを図っていることが確認できました。ただし、その完成度を上げるために、記録の改善や、生産者や従業員への教育の必要性などについて、指摘がありました。

農研部会から特別栽培部会へ

 紀ノ川農協では、15年程前、東都生協の他のみかん産地が除草剤(雑草を枯らす農薬)を使用していないことから、除草剤を使用しないみかんの生産者で農研部会をつくりました。除草剤を使わないと一口に言ってもそう簡単ではありません。みかんといえば山の斜面の畑です。しかもみかんの木は低いため、夏の暑い時期に草刈り機を担いでの作業は重労働。しかし一方で、除草剤を使わないため土が良くなったとの声が生産者から聞かれたそうです。
 そして今年、和歌山県の特別栽培農産物として認証を受けるべく、特栽部会へとバージョンアップしました。特別栽培農産物とは、化学合成農薬と化学肥料の使用を、地域の一般的な栽培と比較して半分以下に抑えた農産物のことです。農薬を半分に抑えるためには、虫や病気の発生を農薬以外の方法か、計画的な農薬の散布で防ぐ必要があります。
 全国的にみかんの消費量が減ってきており、紀ノ川のみかんも例外ではありません。この取り組みは、まさしく生き残りをかけた紀ノ川農協の挑戦なのです。

みかんの味へのこだわり

 みかんの場合、味のチェックが欠かせません。紀ノ川農協の場合は出荷前から定期的に畑ごとの糖度と酸度を分析し、出来具合を把握します。そして、味が良くなってきた畑から出荷をしていくのです。さらに生産者が農協に持ってきた時にも糖度と酸度を分析し、一定の基準をクリアしたものだけを出荷するようにしています。この糖度と酸度の分析については、生産者から出荷されたものから、一番おいしくなさそうなものをサンプルとして抽出しているので、紀ノ川農協のみかんは味にも自信があります。

地域農業再生のための新たなる挑戦

大阪からも買い物客がくる直売所「ふうの丘」

 紀ノ川農協は、生産者の年齢構成では60代が一番多く、70代以上の生産者は約2割と、農業の継続性も課題となsます。そこで農協では、新規就農者や高齢者への支援を模索しています。高齢化した生産者でも農業を続けていけるよう、また若者が農業にかかわれるように、生産者による農業研修生の受け入れや、生産法人の設立などを検討しているのです。
 さらに、生協などへの販売事業だけでなく、「ふうの丘」という直売所やブルーベリー園やみかん園、ピオーネ園の「農村公園」で都市と農村をつなげる取り組みも進めています。
 地域農業の再生とともに、食料自給率向上まで視野に入れた、「厳しい農業情勢の中でも新しい挑戦」を紀ノ川農協はしているのです。

産直の課題 ─ 見栄えか、安心か ─

生産者からの聞き取りによって、栽培管理状況を確認

 みかんに限らず、産地では収穫されたものすべてを生協に出荷しているわけではなく、生協からの注文が予定より少なければ、市場などに出荷することになるのです。生協向けであれば、多少見栄えが悪くても組合員の理解を得て、供給することができるものでも、市場に出した場合は、見栄えが悪いものはたとえ味が良くても買い叩かれてしまいます。ですから、産地によっては市場に出すことも視野に入れて見栄えをよくするために農薬を散布しなくてはならない事実もあるのです。例えば、かんきつ類で皮に黒い点ができる黒点病という病気がありますが、それは農薬によって抑えることができます。しかし、消費者が多少の黒い点を許せるのであれば、農薬の散布を抑えることができるのです。
 もちろん、農薬は農産物を安定的に生産するためには必要なものですが、少しでも農薬の散布を抑えてほしいというのが消費者の正直な思いでもあります。東都生協においても産地がこだわって生産した農産物をすべて引き取ることができればいいのですが、共同購入である以上、組合員の皆さんからの注文次第という事情もあります。こだわった農産物を安定的に手に入れるためには、組合員の皆さんからの安定的な注文が欠かせないのです。生協としても組合員の皆さんへ理解をしてもらうための取り組みが必要です。

監査人として参加した組合員の感想 ─ 抜粋 ─

今回は監査人として東都生協の組合員3人が参加しました。監査人になるための講習会を修了した組合員理事のみなさんで、以下はその感想です。

産直は産地と生協の双方で築くもの

監査を進めていく中で行き着いたところは、どちらか一方が取り組むものではないということです。これだけ努力している産地に対して、私たち東都生協は要望を出すだけではなく、利用することにより買い支え、交流をすることにより、よりよい関係を築く。そのことが産地にとってがんばりの活力になるのだと思います。

公開監査で産地と生協がよりよい関係を

産地が責任を持った仕事をすれば、それを受ける生協側も産地と生協の組合員に責任をもった仕事をしていかなければならない。公開監査は、産地・生協双方、準備と覚悟が必要ですが、公開監査をすることで、産地と生協がさらに良い関係を築いていけるのであれば、公開監査をする意味はとても大きいと思います。

安全で安心なものを届けるために

紀ノ川農協は和歌山県の認証を受けるため、通常栽培の化学合成農薬・化学肥料をいずれも50%以下に抑え、「安全で安心なものを届ける」これを目標に生産者・農協が一丸となっています。しかし、農薬と化学肥料50%減と簡単に言っても、「除草剤をまかないために、一日の労働の半日は草むしり、殺虫剤を使わないためにゴマダラカミキリの幼虫を針金でかきとる」などの努力を重ねている生産者もいました。

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