公開監査

公開監査レポート

持続可能な農業をめざして

(農)佐久産直センター

2005年7月14日

 去る7月14日(木)長野県のりんごの産地、紅玉でおなじみの(農)佐久産直センターにて公開監査が開催されました。公開監査とは産地の品質管理の仕組みを参加者のみなさんで確認すると同時に、産地のかかえる課題や消費者の思いを共通認識にする場でもあります。約70人の参加者(東都生協からは20人以上の組合員が参加)が見守る中、農薬の散布や肥料の使用などについての約束事を守るための仕組みがきちんとあり、若い後継者もしっかりと育っていることが確認できました。公開監査終了後にはりんごとプルーン畑に行き、生産者から栽培に関する話をうかがうことができました。

(農)佐久産直センター…東都生協とは30年近く前からの産直取引がある産地で、品目は紅玉や、ふじ、つがるなどのりんご、プルーン、そして殿様ねぎです。

プルーン畑から浅間山を望む

6人の監査人が朝から晩まで事前監査
 ─ 1枚1枚の記録から農薬保管状況まで細かくチェック ─

 公開監査の前日に監査人が事前監査を行いました。産地でのさまざまな決まりごとや記録などの文書の確認、および産地との質疑を行いました。生産者一人ひとりの行動を四六時中見ることはできないので、産地の取り組みを評価するために、産地としてどのような約束事があり、それが守られているかどうかを、文書(記録など)で確認することになります。その後、2グループに分かれて、それぞれ2~3人の生産者のお宅にうかがい、畑での栽培管理の状況を聞き取り、栽培記録の確認、農薬の保管状況などをチェックしました。

監査人…今回は専門家1人、他のりんご産地から1人、東都生協組合員3人、東都生協職員1人の計6人が監査人として産地の取り組みを確認しました。

りんごの栽培状況についての聞き取り

生産者の農薬の保管状況を確認

一年中休む暇がないりんご栽培 ─ りんごの一年 ─

 まず、今回の監査対象であるりんごについて参加者に理解していただくために、りんごの一年について説明がありました。

《冬》 せん定 日が満遍なく当たるよう、人が作業しやすいよう、まずは大きな枝からそして小さな枝とせん定を行います。りんごの収穫量が左右されるとても大事な作業です。せん定した枝は1本1本拾い集めるのですが、腰の痛くなる厄介な作業です。

《春》 花が咲くと蜂や人による受粉を行います。気温が上がれば蜂も飛びますが、そうでないと人の手で一つひとつ受粉させます。根気のいる作業です。また、この時期は霜に気をつけなければなりません。霜がおりそうな前日、生産者は気が気でなりません。防霜ファン(霜を防ぐための大きな扇風機のようなもの、茶畑でよく見かけます)が入る前は、一晩中火を燃やして霜の害を防いでいたそうです。

《夏》 除草や摘果で、朝から晩まで忙しい日々が続きます。草を刈るのも一苦労、平地が多いため、乗用の草刈機で行える部分もありますが、木の下など細かい部分は手持ちの草刈機で除草します。摘果とは果実の間引きで、収穫まで2~3回行います。実が大きくなると、色づきを管理するために実のまわりの葉を取り除いたり、玉回しをしたりして日が満遍なく当たるようにします。

《秋》 いよいよ収穫、一つひとつ丁寧にかごに入れていきます。一年の努力の結果が出るときです。ただ、この時期に台風が来るとその苦労も水の泡になってしまいます。さらに木が傷むと来年以降の収穫にも影響してしまいます。

残留農薬検査や「技術短報」で安全の裏付け ─ 産地における栽培管理 ─

 産地と東都生協の間にはりんごを栽培する上での農薬散布などについて約束事があります。佐久産直センターでは、出荷前に農薬の使用状況が記録された栽培管理記録を生産者が提出し、生産部長(栽培管理に責任を持つ生産者の役員)がその点検をすることになっています。
 さらに、残留農薬検査をしますが、どこの畑からなのかは生産者に知らせずに、生産部長がりんごを無作為にとって検査するのです。
 技術的な支援として、「技術短報」という生産者向けの広報物をまめに発行し、その時期気をつけるべき点などの情報提供をすることにより、病虫害に対して適切な対応ができるようにしています。

食味向上のためのアミノ酸肥料  ─ おいしさの追求 ─

 「アミノ酸は果物の味を良くする」ということから、佐久産直センターではアミノ酸肥料の使用を生産者に義務づけています。借りた畑などでこの肥料を使い始めると、年々味が変わってくるそうです。
  余談ですが、山に近いりんご畑ではいのししや鹿などの野生動物の被害を受けるそうですが、わざわざ他の畑を素通りして、佐久産直センター生産者の畑のりんごを食べるとのことです。野生動物も味がわかるのでしょうか。

目合わせ会で出荷基準を統一 ─ 届くまでに4回も確認 ─

 佐久産直センターの場合、収穫したりんごを各生産者のところで選別し、東都生協向けのコンテナに入れる場合と、産地で選別しダンボールに入れる場合があります。そのため、産地と東都生協で決めた出荷基準(大きさ、重さなどの規格や、色、形、虫食い、傷などの品質の基準)を全生産者で共通認識にする必要があります。ここでは出荷前に生産者が収穫した農産物を持ち寄り、出荷できるものとそうでないものの確認(これを目合わせといいます)を全員でします。皆さんのところに届くまで、収穫、生産者でのコンテナ詰め、産地での検品、小分けセットと4回もチェックを受けていることになります。さらに、ほとんどの生産者が保冷庫を持っており、夏場なども品質管理ができているとのことでした。保冷庫を持っていない生産者のりんごは、産地の保冷庫を利用して品質管理をしています。

農業の持続には経営の安定が大事 ─ 産地努力を正しく評価 ─

 「安全でおいしいものをできるだけ安く、しかも継続的にほしい」というのが消費者の正直な気持ちではないでしょうか。ただ、そのためには農業経営が安定している必要があります。今回、りんごの売り上げから生産のためのコストを引いて、労働時間で割ったところ、生産者の手取りは時給800円足らずという結果になりました。これでは農業経営も安定しません。佐久産直センターでは、できるだけ環境に負荷をかけない農薬を選択していますが、それはコストアップにつながります。また手間のかかる摘果は一般的な栽培では農薬によって行っていますが、東都生協のりんごの産地は手作業でしています。まずは、そんな生産者の努力を生協(組合員)がきちんと理解して評価する必要があります。
 「一日りんご一個で医者いらず」といわれるように、りんごは体によい果物と昔から言われています。秋から出始めるりんご、産地のことを思いながら食べてみてはいかがでしょうか。

参加者の声 ─ 当日のアンケートからの抜粋 ─

今回参加した方にはアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。

りんご畑で栽培について生産者が説明

「農薬や化学肥料などをおさえ、経費がかさんでも、より安全性の高い農薬を使って下さっているということで、安心して、おいしいりんご、プルーンが供給されるのでうれしい」「生産者方のご苦労が大変よく理解できました。私たち組合員はその苦労を受け止め、買い支えなくてはと思いました」「これだけ東都仕様にそって作っていただいているのだから、色々なかたちで販売するよう東都も考えなければいけない気がします」 「“ペンは鍬よりも重し”といった生産者の方がいらっしゃいました。どこの産地に行っても聞かされる言葉です。信頼のみだけでは成り立たないと思いますが、緩和したところも必要なのでは?」「今回の監査のための準備期間が2カ月程ということでそんな短期間で公開監査ができちゃうということは日常の作業がきちんとされているということのあらわれだと思います」「日本の農家の現状を私たちももっと知らなければならないと思います。課題のクリアに私たちも協力したい」「後継者の50、40代が育っているのが心強いように思った」「安価な悪質な輸入品に荒らされようと、いずれ健康志向、本物志向で良質な商品は必ず復活します。がんばってほしいと切に希望します」「佐久の気候や栽培の苦労、一年間いろいろな作業があって忙しいなど、笑顔で語って下さってもっともっとりんごを注文して知人にも教えてあげたいと思った」

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