公開監査
公開監査レポート
鳥インフルエンザにも負けない
JAやさと(鶏卵)
昨年の12月15日、東都生協の卵産地のひとつであるJAやさと※1で公開監査が開催されました。73人※2が見守る中、東都生協との約束事である「Non-GMOの餌」や「生産者や採卵日ごとの区分管理」などについて監査したところ、JAやさと(鶏卵)の確かな取り組みが確認できました。
一昨年、茨城県の養鶏農家は鳥インフルエンザの発生で大きな打撃を受け、JAやさとの生産者も例外ではありませんでした。生産者には消費者が思いも及ばないような苦労があることを実感する場ともなりました。
※2 参加者内訳…東都生協組合員:13人、役職員:6人、他産地:14人、JAやさと:33人、JAやさと招待(取引先など)5人、その他:2人

【監査人※による事前監査】
卵の品質検査の実演 |
※監査人…ISO審査員1人、他の産地から2人、東都生協組合員2人、東都生協職員2人の計7人
10:00 | 鶏卵センター視察 |
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12:00 | 昼食 |
12:50 | 鶏舎視察 |
13:45 | 産地からの説明・質疑、文書確認 |
17:00 | 事前監査のまとめ、公開監査に向けての打合せ |
17:30 | 終了 |
【公開監査】
10:30 | 開会あいさつ【JAやさと、東都生協】 |
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10:50 | 産地からの取り組み説明 |
11:55 | 昼食・交流 |
13:00 | 事前監査報告、質疑 |
13:50 | ミニ学習「鳥インフルエンザ」 |
14:45 | 休憩 |
15:00 | グループ別意見交換 |
16:05 | 意見交換まとめ、主催者まとめ【JAやさと、東都生協】 |
16:30 | 終了 |
監査人による文書の確認 |
東都生協との間にはいくつかの約束事がありますが、そのうち、私たちが気になる餌については「卵を産む鶏の餌は、指定配合飼料※を与える」となっております。7人の監査人が12月12日に行った事前監査で生産者の餌の購入記録を確認したところ、飼養羽数に応じた量を購入していることが確認できました。
JAやさとからは、昨年の夏に飼料の生産現場であるアメリカの視察報告もされました。飼料の多くを占めるとうもろこしは農場で収穫された後、はしけに積み込まれミシシッピー川を下って、さらに大きな船に積み替えられ輸出されるわけですが、Non-GMOとそうでないとうもろこしはきちんと区分管理する必要があります。視察では各段階での区分管理状況や、それを裏付けるためにNon-GMOのみならず残留農薬検査も行われていることを確認してきたとのことです。
JAやさとでは指定配合飼料と同時に独自の発酵飼料を与えています。発酵飼料は鶏の健康管理に役立つだけでなく鶏糞の臭いを軽減する働きもあります。実際に視察した生産農場では、鶏糞の臭いはほとんど気になりませんでした。
視察した農場の鶏糞処理施設 |
家畜の排せつ物については、環境への影響を抑えるために適正な管理をし、持続的農業の発展のためにたい肥として有効活用することが法律によって定められています。そのため、各農場には鶏糞を処理するための施設が必要ですし、処理した鶏糞を活用することが求められます。事前監査では全生産者が問題なく対応していることを、写真や記録によって確認しました。
監査人が視察した農場では、鶏糞がきちんと堆肥化され、その際に出る臭気についても出ないような工夫がされていました。畜産の農場では糞尿の臭いがするのが常なのですが、そこではほとんど気になりませんでした。このことは鶏の健康のみならず、近隣住民との共存という意味からも大切なことなのです。
鶏卵センターでの監査 |
JAやさとの鶏卵センターでは、生産者から集めた卵を、洗浄、殺菌すると同時に、ひび割れ卵や血卵(血が混じっている卵)などを除去しています。東都生協の卵パックには、包装日、賞味期限、生産者が明記されたカードが入っており「卵の包装(パック)日は採卵日の当日か翌日」との約束事もありますので、生産者・採卵日ごとに区分管理する必要があります。
事前監査ではそれらの管理がきちんと行われているかについて、実際の作業や記録を確認しました。ひび割れ卵や血卵はそれぞれ機械によって感知され、除去されていました。さらに人の目によっても3カ所で確認し問題ないものが出荷されています。区分管理については、卵置き場では生産者・採卵日ごとに分別管理され、洗卵ラインへの投入や製造したパックの製造記録なども取られており、投入量と出来高の整合性も問題ありませんでした。監査人からは「約束事を守るための仕組みがあり、きちんと機能していることが確認できた。ただ、作業の効率化という点からも、検卵のしかたの改善が必要では」「いろいろな記録をつけているが、つけるだけでなく有効活用する視点が大事」などの指摘がされました。
鳥インフルエンザによる被害を語る諏訪さん |
グループに分かれての意見交換で |
一昨年、茨城県で発生した鳥インフルエンザ。最終的には、県内40農場約570万羽に及ぶ甚大な被害となり、JAやさとの生産者も例外ではありませんでした。人一倍気をつけていたにもかかわらず、被害を受けた諏訪さんから報告がありました。
茨城県で発生し始めてからも諏訪さん自身は「野鳥対策の網、車両消毒の装置、鶏舎の入り口には踏み込み消毒槽、廃鶏時には車両やかごの消毒…、インフルエンザ対策の大体は行っているからたぶん大丈夫ではないか」と思っていました。
それだけに検査結果で陽性が伝えられたときには自分の耳を疑い、体全体から力が抜けていくような感じがしたそうです。通知に来た家畜保健所の職員も「まさかこんなによくやっている諏訪さんのところで出るなんて、私も信じられません」。諏訪さんは、そういわれたものの事実が受け入れられず、すべてが上の空でした。
鳥インフルエンザの発生が確認された農場は、国の防疫マニュアルに沿って鶏の殺処分が行われます。「一生懸命育てた鶏が目の前で次々と殺されていく光景を、ただただ見ているだけというのが、無念というか到底言葉では言い表せません。しかし感傷に浸る間もなく作業に追われた3日間でした」鶏がすべて処分された日の夕方、不気味なくらいシーンと静まり返った農場で、従業員の手前こぼれ落ちそうになる涙をこらえ、今後の見通しや仕事の段取りを何とか説明されたそうです。「昼間は体を動かすことで気がまぎれますが夜になると、『なぜ、どうしてインフルエンザが出てしまったのか』と自分を責める日が続きました」。
2005年12月には雛を導入し経営は再開され、1年が経った現在では羽数も元に戻りましたが、発生前の状態になるにはまだ時間がかかり、精神的にも経済的にも大きな痛手を受けました。
卵を買うということがなかった諏訪さんは買う立場になり、「自分が食べる卵を、何を基準に選んだかというとやはり、作った人がわかるという安心感でした。今回またこうして卵を生産できるようになった今、消費者の皆さんに安心して食べていただける卵を作る、このことを目標にこれからも最大限の努力をしていきたいと思います」と締めくくりました。
今回参加した方にはアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。
(1)産地に対しての感想
「組合員としては東都生協との約束ごとを守るための仕組みなどは機能していることを確認できて安心した」「総合的にマニュアルなどもきちんとできていて、安心安全な生産ができているということがよくわかった」「諏訪さんの鶏舎の静まり返った夜の話には絶句してしまった。それでも再開される強い力、みんなに支えられて八郷の仲間ってすごいと思った」
(2)公開監査の運営についての感想
「おおむねよかったと思うが、監査人からの話があまりにも短くて簡単でもう少しじっくり話を聞かせてほしかった」「鳥インフルエンザの学習会を設けてあったのがとてもよかった。生産者の声を聞けたことで、今までどんなものかあまりわかっていなかったので、本当に大変なことだったのだと実感した」「とても良かったと思うが、鶏卵生産者の方たちの苦労話しや誇りに思っている事などもっと聞きたかった(最後のグループでの話し合いの時)」
今、養鶏業界においては、鳥インフルエンザの対策の観点から、農場、鶏卵センターなどへの産地訪問は控えさせていただいているのが現状で、直接組合員の方との交流が少なくなってしまっているような気がしております。
このような状況の中でも、消費者の食品への安心を確保するために、日ごろ産地で取り組んでいる姿を公開監査という形で、情報を開示できたことをありがたく思っているところです。1つ心残りとして、監査人には見てもらいましたが、組合員の皆さまに農場や鶏卵センターを写真のみで、直接お見せすることができなかったことだけが残念です。
生産農場および鶏卵センターから出荷までを監査していただき、問題はありませんでしたが、指摘された内容の一部として作業効率やマニュアルの向上などを含め、現在で満足せずにさらなるレベルアップを図ることをお約束したいと考えております。
今後も組合員の皆さまには安心して召し上がっていただけるよう、日々努力し、生産し続けていきますので、ぜひ組合員の皆さまには卵を買い続け、買い支えていただければと思っております。