公開監査

公開監査レポート

21世紀の稲作をけん引する生産者たち

会津有機米研究会

2008年11月13日~14日

 11月13日~14日、福島県猪苗代にある会津有機米研究会で公開監査が開催されました。当日は約30人が参加し、産地での品質管理のしくみを確かめると同時に、交流を通じて生協組合員と生産者がお互いへの理解を深めることができました。産地の方が驚くくらいの素晴らしい晴天が続いた2日間で、晩秋の紅葉も楽しめました。
 猪苗代の中でも大規模な稲作農家の集まりである会津有機米研究会は、先進的な取り組みを行い、厳しい農業情勢の中、若い後継者も育っており、地域のけん引役となっています。

田んぼで食事中の白鳥

日程表(実績)
2008年11月13日(木)

監査人と参加組合員は行動が異なります。

【監査人】

10:30 猪苗代駅着
10:40 事前監査
  • 2グループに分かれて、生産者の田んぼや倉庫の確認
  • 産地からの説明、質疑
  • 文書の確認
18:00 夕食・懇親会
20:00 引き続き事前監査
  • 文書の確認
  • 監査報告の取りまとめ

【参加組合員】

12:30 猪苗代駅着
  • 生産者の田んぼや倉庫の見学
  • 地域めぐり
18:00 夕食・懇親会

産地から説明を受ける監査人

監査人による生産者の田んぼの視察

監査人による文書の確認

参加組合員による生産者倉庫の見学

2008年11月14日(金)
09:05 公開監査 開会
  • 会津有機米研究会から、あいさつと説明
  • 東都生協から、公開監査の趣旨説明
09:35 事前監査報告・質疑応答
11:10 グループ別意見交換・報告
12:10 まとめあいさつ(東都生協、会津有機米研究会)
12:20 終了
※終了後、参加組合員は昼食を食べ、地域めぐりをして帰京。

休憩時間には新米の試食もありました

生産者から文書の説明を受ける参加者

事前の監査でしっかり確認 ─ 環境と安全性に配慮した稲作 ─

公開監査で報告をする監査人

 1日目に、産地の取り組みについて6人の監査人が監査を行いました。「東都生協と確認している基準に従った栽培がされているか」、「ほかの米と混ざることがないよう、区分管理されているか」について、産地からの聞き取りや記録の点検、生産者の田んぼや倉庫の視察で確認しました。結果、会津有機米研究会として出荷しているお米(ひとめぼれ、ヒメノモチ、コガネモチ)は、すべて特別栽培農産物として第三者認証を受けており、環境と安全性に配慮した稲作をしていることが分かりました。また、この産地では各生産者が収穫したお米(モミ)を乾燥し、もみすりをして30kgの米袋につめるのですが、きちんと機械の清掃をして他の米と混ざることがないように管理されていることも確認できました。監査人からは、生産者にとって使いやすい記録書式の作成や、複数人による文書の確認の必要性について指摘がありました。
特別栽培農産物とは、農業の自然循環機能の維持増進を図るため、化学合成された農薬及び肥料の使用を低減することを基本とし、その地域の慣行レベルに比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、かつ化学肥料の窒素成分量が50%以下で栽培された農産物のことを言います。
子どもたちが日本を変える ─ 都市の小学校との交流 ─
 会津有機米研究会では、ボランティアで三鷹市のある私立小学校への出張授業を行っています。代表の小林さんが中心となり、10年以上前から毎年、小学校の校庭に田んぼを作り、米づくりの指導や学習をするだけでなく、子どもたちが小林さんの田んぼに来て、田植えや稲刈りを体験しています。私たちの普段の生活からは、食の生産現場を知ることはなかなかできませんが、子どもたちはこのような体験を通して、食の向こう側にある農業の現場を知り、食べものを大切にする心が生まれます。実際、これに参加したことで「日本の農業を変えたい」と農水省の入省を目指している子どももいるそうです。
21世紀の農業を担う生産者たち ─ 後継者が育つ経営 ─
 各生産者は会津有機米研究会として販売する以外にも独自のルートを持っており、皆さんしっかりした経営感覚を持った自立した稲作農家です。厳しい農業情勢の中、地域内で稲作を続けられなくなった農家の田んぼを引き受け、規模を拡大し、地域の稲作のけん引役となっています。日本の農業現場では高齢化が進み、離農する農家も増えているのですが、ここでは生産者の多くに若い後継者が育っています。彼らがいきいきと農業をしている姿を見ていると、日本の農業の将来が危ぶまれる中、明るい兆しを感じます。
食と農のコミュニケーション ─ お互いの本音も ─
 公開監査は、産地の取り組みを確かめるだけではなく、生産者と消費者がお互いの事情を理解し合う場でもあり、質疑や小グループに分かれての意見交換を行います。消費者からの「種子消毒はどうしているのか」「田んぼへの給水に生活排水が混ざることはないのか」などの質問には「一部の生産者は有機農業でも使用できる微生物農薬を使用しており、トータルの農薬の使用を抑えている」、「田んぼへの用水は裏磐梯の秋元湖からきているので水源には恵まれている」などの回答でした。一方、生産者からは「私たちは生産に集中したいので、販売は生協ですべてお願いできればうれしい」という要望や「食味日本一を目指している」などの稲作にかける思いも聞くことができました。
グループに分かれての意見交換
参加者の声 ─ 当日のアンケートからの抜粋 ─

今回参加した方に書いていただいたアンケートから、特徴的な部分を抜粋します。

「安心安全でおいしいお米づくりをしていることがわかった」「熱心さに感心させられた」「少人数の組織にもかかわらず、情報交換しながら、前向きに取り組んでいるようすがうかがえた」「後継者がいる希望の見える産地」「生産者の誇り、プライド、自信が見てとれる」「親近感を抱き、応援したい気持ちになれた」

監査を終えて ─ 会津有機米研究会 会長 小林重希 ─

 わが会津有機米研究会は、会則にある「本会は農業本来の姿である『自然環境保全型農業』を基本とし、有機農業を目指して限りなく邁進し、社会に寄与することを目的」として、1994年12月10日に志を一つにする稲作プロ農家が集い、発足しました。
 以来、会員(8名)と共に研究を重ね、自然豊かな会津磐梯山と猪苗代湖が織りなす標高520mの猪苗代盆地に開けた農業と観光の地で米の生産をしております。
 このような自然豊かな環境の中で会員と共に、有機質肥料やEM菌、土壌改良剤(ハイグリーン)などを施用し、微生物の豊富な土づくりを始めたのが私たちの田んぼです。
 会津磐梯山麓の落葉や、ミネラル豊富な伏流水を農業用水に使用し、高冷地のため日中高温で夜温が低く湿度も低い気候なので、イモチ病の発生しにくい地域です。その地理的条件を生かし、春先の苗代期に殺菌、殺虫剤と田植時の除草剤1回の防除と有機質100%のバイオノ有機肥料での栽培法を基本として、良質米の生産に努力しております。

 私たちの生産するお米は、農水省のガイドラインによる特別栽培農産物の認証を取得し、年2回の現地検査を受けていますので、消費者が安心して食べられる安全なお米と確信しております。
 このため、水田にはタニシ、ドジョウ、トンボがいっぱいです。ちょうど、生協より参加された方々と会員の水田を視察していた際に、100羽ほどの白鳥が落穂を食べているようすを見られました。
 今後、私たちは「土づくり宣言21エコプラン」に約束した通り、安全・安心のできるお米の生産に努力します。また、監査で指摘された書類の整備を図り、複数人による文書類の確認も必要と考え、改善します。

 この場を借り、希望とお願いを申し上げます。
 私たちの生産量の30%が東都生協に納品しておりますが、残りの70%は、自ら私たちが販路を見つけ販売しております。私たち生産者が販路を開拓することは大変なエネルギーです。毎年、収穫が終わると11月より3月までの5カ月間は関西、関東地方にセールスに出ております。そのエネルギーを米の生産技術、土づくりに向け、生産に全エネルギーを集め、安全で安心できる稲作経営を希望しております。

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