公開監査

公開監査レポート

牛にも人にも地球にもやさしい 自給飼料100% 北里八雲牛

北里大学 八雲牧場

2007年8月28日~30日

 8月28日~30日、さわやかな風が吹き渡る北里大学八雲牧場にて23人の東都生協組合員が参加し、交流と公開監査が行われました。
公開監査とは、監査人が中心となって産地の品質管理の仕組みを確認すると同時に、産地の特長を理解する場でもあります。
北里八雲牛が約束どおりに生産されていることを確認できたことはもちろん、資源循環型の持続可能な畜産を実感することができました。
28日~29日にかけて行われた、公開監査の模様をお知らせします

広大な北里大学八雲牧場

スケジュール概要
2008年8月28日(火)
15:55 監査チームによる監査開始
  • 八雲牧場からの説明
  • 監査人からの質疑
  • 監査項目(自給飼料の給与、動物用医薬品の使用など)に沿って確認
19:00 夕食
20:00 監査再開
  • 飼料の給与や動物用医薬品使用状況の文書による確認
20:40 1日目終了
※一般参加者は別行動
2008年10月17日(金)

08:30 監査チームによる監査2日目
  • 牧場視察(牛舎、サイロ、堆肥舎、放牧地など)
  • 監査報告書作成
12:00 監査チームによる監査終了
※参加者は体験学習など
昼食
13:00 公開監査
  • 八雲牧場から説明
  • 監査チームからの監査結果報告
  • 質疑応答
  • まとめ
14:30 終了
※その後、参加者は牧場見学や体験学習、8月30日に帰京
監査項目は餌と薬と排せつ物

 東都生協と産地との間にはいろいろな約束事がありますが、公開監査ではそれらが守られているか、関係法令を遵守しているかなどについて確認します。
今回は、以下の項目について監査チームが確認をしました。
(1)北里八雲牛は自給飼料100%であること。
(2)動物用医薬品は適正に使用すること。
(3)牛の排せつ物は適正に処理をして利用すること。

夏は牧草、冬はサイレージ ─ まさしく自給飼料100% ─

 北里八雲牛は自給飼料100%です。雪のない期間(だいたい5月~11月)は放牧をし、それ以外の積雪期は、夏の間に刈り取り発酵させた牧草(サイレージ)が餌になります。
積雪期は牛舎ごとに必要なサイレージの量が牛の生育段階と頭数から計算され、給餌計画が立てられます。その計画に基づいて必要量のサイレージを与えていることが記録によって確認できました。
日本における飼料自給率は25%(2005年)で、餌の中でも穀物の多くは輸入に頼っているのが実情です。北里八雲牛の場合は国産自給率100%ということでなく、八雲牧場内での自給を行っており、まさしく資源循環型の畜産といえます。もちろん、牛の餌となる牧草には、農薬や化学肥料は使用されていません。

バンカーサイロ
この中で牧草を発酵させ、サイレージを作る

ロールラップサイレージ
ビニールでくるんでサイレージを作る

動物用医薬品は一頭ごとに記録 ─ 牛にとってよりよい環境作りから ─

監査人による文書の確認

 牛はある程度大きくなると、ほとんど病気にならないのですが、寄生虫の駆除や、まれに治療のために動物用医薬品を使用することがあります。その際には、薬ごとに定められている休薬期間(と畜前、投与できない期間)を守る必要があります。監査人が記録を確認したところ、1頭ごとに投与記録があり、適正に使用されていることが確認できました。ただ、1頭の牛に対して複数の記録を確認したいといけないため、監査人から「一目で確認できるとよい」との指摘がされました。
八雲牧場では、医薬品を使用しなくてもよいように、牛にとってよりより環境作りを心がけています。実際、広々とした牧場での放牧のためストレスが少ないせいか、子牛の下痢や病気になる牛も少ないそうです。

牛舎から出る牛ふんは堆肥に ─ 牛の排せつ物は適切に処理され活用 ─

 家畜の排せつ物は、環境を汚染しないよう適切に管理し利用することが法律により定められています。放牧は問題ないのですが、牛舎から出る排せつ物は対象になります。
この牧場では、牛舎の床はコンクリートでできているので、牛のふん尿が流れ出たり、地面にしみ込んだりする心配はありません。牛舎には伐採チップが敷き詰められており、牛ふんと伐採チップが混じったものが堆肥舎に運ばれ、発酵し、約2カ月で堆肥となります。堆肥は全量牧草地に散布されていることも確認できました。
普通、畜産農家に行くと排せつ物の臭いが気になるものですが、ここでは牧草ばかりを食べているせいか、いやな臭いはほとんどしませんでした。

牛ふんを機械でかき混ぜ、発酵を促進。
混ぜた後、触ったら熱かった・・・

できた堆肥はこの機械で牧草地に散布

持続可能な畜産がここにある ─ 八雲牧場は牛にも人にも地球にもやさしい ─

参加した組合員からもたくさんの質問が出て、さらに産直交流を深めることができました

 太陽と土、大気、水により牧草が育ち、その牧草を食べた牛は自らの肉を作り、排せつ物を出します。肉は人間が食べ、その排せつ物は土に返り、牧草の肥料となります。
積雪期以外、ここの牛は放牧され、草を食み、通常は人の手を借りず自然分娩し、子牛は6カ月まで母牛と一緒・・・

「牛のことを第一に考えた環境づくりを心がけたら、結果的に資源循環型畜産になっていた」といいます。
北里八雲牛の肉は脂肪が少なく赤身中心で人の健康にもよい。共役リノール酸も通常の牛肉に比べると多く含まれているとのことです。

 北里大学八雲牧場の畜産はまさしく「牛にも人にも地球にもやさしい畜産」であることを実感しました。

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