公開監査
公開監査レポート
海を汚さない
三浦半島EM研究会
秋のさわやかな青空が広がった10月20日、神奈川県の大根とキャベツの産地、三浦半島EM研究会※1にて公開監査が開催されました。公開監査とは産地の品質管理の仕組みを参加者が確認すると同時に、産地の特長を理解する場でもあります。55人※2が見守る中、三浦半島EM研究会は東都生協との約束どおり※3の野菜を生産していることはもちろん、EM(有用微生物群)を活用し海を汚さないような農業を実践していることや、気概をもった若い生産者が育っていることもわかりました。生産者と組合員がじっくり意見交換できた公開監査となりました。
※2 参加者内訳…東都生協組合員:26人、役職員:5人、他産地:8人、三浦半島EM研究会:15人、その他:1人
※3 東都生協との約束…東都生協では使用予定農薬や散布回数などについて事前に産地と文書で約束を交わしています。
大根畑の視察

【監査人※による事前監査】
※監査人・・・専門家1人、他の産地から1人、東都生協組合員2人、東都生協職員2人の計6人
10:30 | 自己紹介、産地からの説明・質疑 |
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12:10 | 昼食 |
13:00 | 公開監査資料について説明・質疑、文書確認 生産者圃場・倉庫視察、公開監査に向けての打合せ |
18:15 | 終了 |
【公開監査】
監査人による栽培状況の視察 |
10:00 | 開会 |
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- 開会あいさつ【三浦半島EM研究会】
- 公開監査の進め方【東都生協】
- 監査人紹介
10:50 | 産地からの取り組み説明 |
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11:30 | 監査人による事前監査報告・質疑 |
12:40 | 昼食・交流 |
13:30 | グループ分け意見交換、報告 |
15:05 | 主催者まとめ【三浦半島EM研究会、東都生協】 |
15:10 | 移動 |
15:45 | 圃場見学【大根畑】 |
16:30 | 終了・解散 |
三浦市および横須賀市は、冬暖かく、夏涼しいという気象条件に恵まれた温暖な地域です。マグロの水揚げ港としても有名ですが、農業では冬は大根、キャベツ、夏はかぼちゃやスイカなどの特産地帯です。農業に適しているだけでなく首都圏から近いこともあり、後継者も他の地域に比べると多いそうです。
EMと米ぬかなどの有機物を活用し、「美味しく、健康によい野菜は土づくりから」をモットーに長年土づくりに努力し、極力農薬や化学肥料を使用しない農業に取り組んでいる生産者のグループが、三浦半島EM研究会です。三浦市の大根、横須賀市のキャベツ専業農家がメンバーです。
土の中には多種多様な微生物が住んでいて、いわゆる善玉菌(有用な微生物)もいれば悪玉菌(有害な微生物)もいます。EMを活用することで土の中の善玉菌を増やして、土を豊かにして、品質のよい野菜を生産しています。その結果、農薬を減らすことができ、経費削減にもつながっています。
産地では、生産物を出荷する前に、約束どおりの栽培がされているかを生産者が提出する栽培記録によって確認しています。3日前に行われた事前監査で、監査人がその記録を点検したところ、約束どおりの栽培を行っていることが確認できました。ただ、一部の記録に記入ミスなども見受けられたので、さらなるレベルアップが必要であるとの指摘がされました。監査人からは「三浦半島に点在している、EMを活用し環境に負荷をかけない農業を志す生産者が、面として広がっていくことを望む」との発言もありました。
午後はグループに分かれ意見交換 |
今回は、参加者に産地のことをもっとよく知ってもらうため、産地には消費者の声を受け止めてもらうため、3つのグループに分けて意見交流を行いました。「栽培基準を作る際に生産者はどのようにかかわるのか」「農薬の廃棄はどうしているのか」「EMで作った野菜はおいしいのか」などの質問や「三浦大根はおいしいが大きいので、小さいのがほしい」というような要望なども出されました。栽培基準については生産者が集まって決めていること、農薬の廃棄は農協が有料で引き取ってくれるとの説明がありました。野菜のおいしさについては、他と食べ比べるとわかる、キャベツは霜がおりた後がおいしいといったことも教えていただきました。話が尽きずに、あっという間に過ぎてしまった1時間でした。
熱い思いを語る川島さん |
代表の息子さんである川島義徳さんは、19歳から農業を始めて現在36歳、3児のお父さんです。子どものころからできることを自主的に手伝い、農業を継いだのは自然な流れだったと言います。
EMを活用し始めた動機は、いかに経費を落とすかということでした。がんばって、いい大根を作っても、1本300円で売れるわけでもないので、もうかる農業をするためには経費削減しかありません。いろいろ試してみて、EMを活用することで農薬を減らすことができ、今では約6割も生産コストを抑えられたとのことです。以前は利益を出すことだけを考えていた川島さんですが「消費者が望むものを作りたい」と思うようになりました。市場に出てしまうと、誰が作った大根かわからなくなってしまいますが、産直をすることで顔の見える関係になれるからです。「思いをわかってくれる人に買ってもらいたい」そのために「消費者のニーズにあった野菜を作る」、「先代から受け継いだ財産を、『後はお前たち頼む』と自信を持って子どもたちに渡したい」そんな川島さんの話を聞いて、応援したくなる生産者がまた一人増えました。
今回参加した方にはアンケートを書いていただきました。その中から特徴的な部分を以下に抜粋します。
「連作障害が出ないように、土づくりやマリーゴールドを植えるなど工夫していること、専業農家として成り立っていること、後継者が育っていることなどを確認できて良かったです」「こだわりを感じます。せっかく作った野菜、東都生協の基準がきびしすぎるように思います。私達は形より安全です」「『良い物を作れば高く売れる』当たり前の事が通らない時代に生協も頑張ってほしい」「自分の作っているものに誇りがあり、愛情があり、向上心があり、皆さん"職人だなー"と、私の理想のお百姓さん集団でうれしかった」「書類だけではわからない生の生産者の声を直接聞けて参考になりました。書類もきちんと記入するようになっていて信頼でき、安心しました」「農家(生産者)の方々とグループで話し合う時間は有意義だった。発表より生の声が役立つ」「消費者、販売者、生産者、三者三様の立場少しでも理解できて良かったです。ガスぬきではなく、少しずつでも理解を深められるように継続してほしいと思います」
公開監査、まずこの言葉に正直身構える感じを覚えました。
しかし、私たちが行っている農業のアピールや組合員さんとの交流ができるので、楽しみにも感じておりました。
事前監査と公開監査を行った感想ですが、私どもの準備不足もあり、十分な対応ができなかったのが悔いに残ります。
世間では食材にこだわりがないというか、安ければそれでよいという風潮が大半の中、組合員さんの食に対する意識の高さには脱帽です。
公開監査自体は終始和やかなムードの中行われたことに感謝しております。とても有意義なことなので、機会があればぜひまた行ってもらいたいものです。
今回の公開監査を経験し、今後産地として今まで以上に栽培技術の向上を目指し、組合員さんが求めている食材を提供できるよう頑張るのはもちろんですが、これまで以上に組合員さんとの交流を深めていければと思います。そのことが組合員さんに対する恩返しとなればよいと思っております。