プレスリリース

報道各位
2018.01.11

生活扶助基準引き下げに関する見直しを強く求める意見書を提出しました

 政府は昨年12月、生活保護のうち、「生活扶助基準(生活保護の生活費の基準)」を引き下げる方針を決定しました。

 東都生協は、誰もが安心して暮らせる地域社会の実現に向けた取り組みの一環として、地域の諸団体と連携し、フードバンクやフードドライブ、子ども食堂など、貧困問題の解決に資する地域の活動を支援する取り組みを行なっています。

 こうした取り組みの経験を踏まえ、地域の組合員と連携・協同し、貧困問題の解決に取り組む立場から、生活保護基準の見直しにあたっては、生活保護受給世帯の生活水準を下げることにつながらないよう、十分な配慮を求めるとともに、生活扶助基準引き下げに対する見直しを強く求める意見書を政府に提出しました。

2018 年1 月10 日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
財務大臣 麻生 太郎 様
厚生労働大臣 加藤 勝信 様

生活扶助基準の引き下げに関する見直しを強く求めます

東都生活協同組合
理事長 庭野 吉也

 私たち東都生活協同組合は、東京を中心に23 万余の組合員が協同し、よりよいくらしと平和な世界の実現を目指して活動する消費生活協同組合です。今回の生活扶助基準を削減する政府方針の決定に対して、大きな懸念を抱くとともに、その見直しを強く求めます。

 政府は、2017 年12 月18 日の財務相・厚生労働相予算折衝を受け、生活保護のうち、「生活扶助基準(生活保護の生活費の基準)」を引き下げる方針を決定しました。今回の見直し案では、有子世帯や母子世帯、高齢者世帯における生活扶助費の削減幅が大きく、最大5%程度の減少となる見通しです。生活扶助費の引き下げは、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」で進めようとしている貧困の連鎖解消の方針に反するものであり、生活保護受給世帯の生活水準低下と貧困の連鎖を招く恐れがあります。

 今日の日本の格差・貧困問題は、高齢者・ひとり親家庭・若者世代と多世代にわたって生じており、平成28 年国民生活基礎調査によると、子どもの貧困率は13.9%で7 人に1 人となっています。また、ひとり親世帯の相対的貧困率は50.8%という深刻な状況です。生活保護受給者数(2016 年3 月時点)は217 万人と過去最高となりましたが、母子世帯の生活保護受給率は約7%にすぎず、制度のはざまに置かれ、必要とする人に支援の手が届いていない現状があります。

 生活保護法は、日本国憲法第25 条に規定される生存権の理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的として制定された最後のセーフティネットです。実質賃金の低迷や雇用の不安定化、少子高齢化の進行、所得格差の拡大など、社会の先行きは依然として不透明であり、国内における格差・貧困の問題は深刻な状況にある中、今後も増えることが予想される生活保護受給世帯の生活水準が維持されるよう、生活保護基準の見直しにあたっては、十分な配慮が必要です。

 私たちは、行政、社会福祉協議会、NPO、医療生協などの諸団体と交流や連携を図りながら、組合員が取り組むフードバンクやフードドライブ、子ども食堂などの貧困問題の解決に資する取り組みを支援する募金活動「未来につなぐ募金」などの取り組みを行なっています。

 貧困は、出産、介護、疾病、老化、障害、失業など、生活環境の変化を機に、誰もが陥る可能性のある問題です。また、自分の力だけで抜け出すことが難しく、貧困の連鎖を生み出すとの指摘もあります。

 どのような環境にあっても、基本的人権が守られ、誰もが将来に希望を持ち、健やかに生活できるよう、地域の組合員と連携・協同し、貧困問題の解決に取り組む立場から、生活扶助基準の引き下げに対する見直しを強く求めます。

以上