プレスリリース

報道各位
2017.06.12

東都生協は政府に組織犯罪処罰法改正に反対する意見書を提出しました

組織犯罪処罰法改正案について、政府は十分な国民論議と国会審議が尽くされないまま今国会の会期内での成立を目指しています。

重要な犯罪要件である「準備行為」が捜査機関によって拡大解釈される恐れや、「準備行為」を摘発するために捜査機関が国民生活を監視する恐れなど、憲法の「基本的人権」に反し、国民が自由な思想に基づき平和で公平な社会を目指すための言論や行動が監視や弾圧の対象となることも懸念されます。
東都生協は、国民のくらしに深刻な影響を与えかねない組織犯罪処罰法改正に反対する意見書を安倍晋三内閣総理大臣あてに提出しました。


2017年6月8日
内閣総理大臣 安倍 晋三 様
東都生活協同組合
理事長 庭野 吉也

組織犯罪処罰法改正案に反対します

 私たち東都生活協同組合は、東京を中心に23万余の組合員が、いのちとくらしを守るため、よりよいくらしと平和な世界の実現を目指して活動する消費生活協同組合です。

 政府は、組織犯罪処罰法改正案を5月29日から参議院本会議で審議し、今国会の会期内に成立を目指しています。同法案については、この間、日本ペンクラブや日本弁護士連合会、地方議会からも廃案または慎重な審議を求める意見書が提出されており、これらの意見書でも指摘されている通り、日本国憲法が定める「基本的人権」および「近代刑事法の原則」からみて重大な疑義のある内容となっているものと考えます。
組織犯罪処罰法改正案では、テロリズム集団とその他の組織犯罪集団により行われる277の犯罪を2名以上で計画し、実行のための準備行為が行われた時点で犯罪が成立するとされており、行為の結果に至った既遂を処罰するとの「近代刑事法の原則」を大きく変えることになります。また、重要な犯罪要件である「準備行為」が捜査機関によって拡大解釈される恐れや、「準備行為」を摘発するために捜査機関が国民生活を監視する恐れなど、憲法の「基本的人権」に反し、心の中で思ったことまでも処罰の対象としてしまう危険性があることを意味します。

 組織犯罪処罰法改正案は、事前に相談(=共謀)したと見なされただけで処罰の対象となるなど、過去3回国会に上程され、その都度廃案となった「共謀罪」と本質は変わるものではありません。また東京オリンピック・パラリンピック開催のためなどとの説明も、日本弁護士連合会などが「日本でも重大な罪を中心に既に予備罪、準備罪があり新たに共謀罪を設ける必要はない」と見解を述べており、幅広い市民運動や労働運動なども監視や弾圧の対象となる危険性があります。戦前の治安維持法の導入時においては、一般市民は対象としないとされていましたが、その後の改定により戦争反対の意思を持つだけで市民が連行され、投獄や拷問を受けてきました。組織犯罪処罰法改正案は、自由な言論や思想が制限されてしまう点において、戦前の治安維持法と本質的に同じではないかと考えます。

 私たち東都生活協同組合は、「平和とより良いくらし」を大切にしながら、様々な平和活動や憲法学習会などの取り組みを進めてきました。国民が自由な意思に基づき平和で公平な社会を目指すことが保障されるべきで、そのための言論や行動が監視や弾圧の対象となり、委縮するようなことはあってはならないと考えます。  本法案は、十分な国民論議と国会審議が尽くされないまま、衆議院で採決・可決され参議院本会議での審議が始まっています。また、マスコミの世論調査などから、国民の理解も不十分であると言わざるを得ません。

 以上のことから、国民のくらしに深刻な影響を与えかねない組織犯罪処罰法改正に反対します。

以上

本件に関する連絡先:東都生協 組織運営部(TEL 03-5374-4751)