プレスリリース

2015.08.26

川内原子力発電所の再稼働に反対する意見書を提出しました

九州電力が8月11日に川内原子力発電所1号機の再稼働を強行したことを受け、東都生協は8月26日、運転停止とエネルギー計画の見直しを求める意見書を、安倍総理大臣・宮沢経済産業大臣に宛てて提出しました。

意見の趣旨は、福島第1原発事故が収束の見通しも立たず、安全確保や核のごみの処分など重大な問題も未解決で、しかも原発ゼロで電力が足りている状況の中、再稼働を強行したことに抗議し、運転の即時停止を求めるとともに、原発依存から脱却と再生可能エネルギーの拡大など持続可能なエネルギー政策への転換を求める、というものです。
意見書全文(PDF)

2015年8月26日

内閣総理大臣 安倍 晋三 様
経済産業大臣 宮沢 洋一 様

東都生活協同組合
理事長 庭野 吉也


川内原子力発電所の再稼働に強く抗議します


私たち東都生活協同組合は、東京中心に23万余の組合員が、いのちとくらしを守るため、生産者と共に持続可能な社会に向けて活動する消費生活協同組合です。私たちは東日本大震災に伴う福島第一原発事故の直後から、被災地支援と食の安心確保、原発依存からの脱却と再生可能エネルギー推進に向けて取り組んできました。

九州電力は8月11日、川内原発1号機の再稼働を強行しました。人類史上最悪規模の福島第一原発事故は、4年半が経過した今も収束からは程遠く、放射能汚染がくらしと環境に深刻な影響を与え続けています。いまだに事故の真相究明、責任追及もなされず、10万人以上が避難生活を強いられ、生活再建の見通しも立っていません。

貴政権はエネルギー基本計画で原発の維持・推進を掲げ、川内原発を皮切りに全国の原発再稼動を進めようとしています。安全の確保や使用済み燃料の処分など重大な問題も未解決で、原発ゼロが電力供給に影響しないことが明らかとなる中での再稼働は、到底受け入れられません。私たちは川内原発の再稼働に断固抗議し、運転停止を求めるとともに、エネルギー計画全体を見直すよう求めます。

1.安全対策が不十分です

新規制基準について政府は「世界最高水準」としていますが、新基準をクリアしても「安全」を保証するものではないことは、新基準を作った原子力規制委員会自体が認めているところです。同型の原子炉である高浜原発再稼働差し止めの仮処分を決定した福井地裁の判決文では、「新基準は多くの点において合理性を欠く」とし、「適合しても原発の安全性は確保できない」と断じています。

専門家からは、技術面や火山噴火などでの対策の不備が指摘されているほか、住民の生命に関わる防災・避難計画は審査対象にせず、自治体任せです。川内原発では周辺自治体の避難訓練すら行われず、災害弱者を含めた防災・避難計画の実効性も検証されていません。重大な原発事故では、風向き・気象によって広範囲かつ長期にわたって被害が生じますが、広域の防災計画の整備も進んでいません。

また新基準は、高レベル放射性廃棄物を暫定的に保管する施設の確保を条件にしていません。日本学術会議は、核のごみの問題をあいまいにしたままの再稼働は、将来世代に対する無責任を意味するので、容認できないと指摘しています。福島第一原発事故の教訓を踏まえるならば、目先の経済ではなく将来にわたって国民の生命と財産を守る対策が最優先されるべきです。

2.原発再稼働の必要性が見当たりません

2013年9月に新基準施行に伴い大飯原発が停止し、原発ゼロとなって以降、冬季・夏季の電力需要のピークにあっても電力供給が不足する事態は起きていません。国民的な節電・省エネ努力などによって、需要を賄えるだけの電力供給が確保できる環境が整備されてきています。

貴政権は原発再稼働の根拠として、エネルギー安全保障やコスト問題を挙げています。海外に資源を依存する点では、調達リスクは化石燃料と変わりありません。また、原発停止により化石燃料の輸入が増加し国富が流出するとしていますが、輸入量は原発停止後もほとんど変化していません。

政府の円安誘導こそが、燃料コスト上昇の主な要因です。原発の維持管理や使用済み燃料の保管・廃炉などを含めたコストは他の発電を上回ります。ひとたび過酷事故が起きれば、その被害は取り返しがつかず、事故の収拾や賠償、除染などにかかる費用は青天井です。

国産で低コストの再生可能エネルギーの拡大と省エネの推進など、持続可能な低エネルギー社会の実現に向け、あらゆる手を尽くすべきです。

3.原子力に頼らないエネルギー政策への転換を求めます

貴政権は昨年4月、原子力発電を「重要なベースロード電源」とするエネルギー基本計画を閣議決定し、福島第一原発事故が収束せず原因究明も尽くされない中で作られた新規制基準に適合すると判断した原発は再稼働を認めるとしました。

しかし今回の再稼働では、政府は再稼働の責任を事業者に押し付け、九州電力、地元自治体、原子力規制委員会ともに再稼働の最終的な判断の責任を回避する姿勢を示しています。福島第一原発事故の教訓が生かされない、こうしたあいまいな責任体制の中で、再稼働を進めることは断じて容認できません。

全世界のマグニチュード6以上の地震の約20%が、日本に集中しています。また日本は世界有数の火山国でもあり、この狭い国土に世界の約7%の活火山が集中しています。地震国・火山国でありながら54基もの原発が集中する日本のような例は、世界に類を見ないものです。

各種メディアによる世論調査では、いずれも多くの国民が原発の再稼働に反対しています。私たちは、一日も早く原発依存から脱却し、再生可能エネルギーの拡大と省エネによる低エネルギー社会を実現するため、持続可能なエネルギー政策を、国民的な議論を踏まえて確立していくことを求めます。

以 上