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2023.02.17

危機的な畜産・酪農経営の安定対策拡充を求める意見書を内閣総理大臣宛てに提出

東都生協は2023年2月17日、危機的な畜産・酪農経営の安定対策拡充を求める意見書を内閣総理大臣宛てに提出しました。

長引くコロナ禍、ロシアのウクライナ侵略および急激な円安により、飼料、肥料、燃料をはじめ営農に欠かすことのできない生産資材が過去最高水準まで高騰し、入手困難となる深刻な事態が広がっています。

とりわけ畜産物生産に不可欠な配合飼料のほとんどは輸入に依存していることから、飼料価格の高騰が酪農経営に与える影響は計り知れません。飼料価格の高騰によるコスト増や子牛価格の暴落などにより畜産農家・酪農家の所得が激減し、生産現場の経営努力のみでは対応しきれない状況にあります。

この問題は消費者にとっても他人事ではありません。東都生協は将来にわたって消費者のいのちとくらしを守り、それを支える食と農の持続的な関係づくりを通じて持続可能な社会を目指す立場から、2月16日付で「危機的な畜産・酪農経営安定対策拡充を求める意見書」を内閣総理大臣宛てに提出しました。

同意見書は、国に対して持続可能な国内農畜産業を確立し、全ての国民への食料の安定供給を確保し、食料安全保障体制の強化を実現するために、危機的な状況にある国内の畜産農家・酪農家にとって即効性のある施策の実施を強く求める内容となっています。

[意見要旨]
1.畜産農家・酪農家の声に、しっかりと耳を傾けた緊急支援策を求めます
2.畜産・酪農経営の危機を打開するため、早急に配合飼料価格高騰対策を講じてください
3.国内の畜産・酪農経営の安定に資する食料自給率向上への抜本的な対策を講じてください


提出した意見書の全文は以下の通りです。
東都生協が提出した意見書全文(PDFが開きます)

2023年2月17日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様


東都生活協同組合
理事長 風間 与司治


危機的な畜産・酪農経営の安定対策拡充を求める意見書


私たち東都生活協同組合は、東京都を中心に25万余の組合員が安全・安心な食料を安定的に手にするために、全国の農畜水産業者や製造者と共に事業と運動に取り組む消費生活協同組合です。

私たちは1973年の設立当初から、生産者と消費者が対等な立場に立ち、生産・流通・消費の在り方を問い直す産地直結を事業と運動の基軸に据えてきました。持続可能な社会を目指して、日本の農畜水産業を守り、食料自給率の向上を図ることを目標に掲げ、食の未来づくりを推進しています。私たちに安全・安心な食料を供給する国内農畜水産業は、国土・環境の保全など多面的な機能を有し、地域経済・社会の維持・発展にも重要な役割を果たしています。

長引くコロナ禍、ロシアのウクライナ侵略および急激な円安により、飼料、肥料、燃料をはじめ営農に欠かすことのできない生産資材は過去最高水準まで高騰し、生産資材が入手困難となる深刻な状況が広がっています。とりわけ、畜産物生産に不可欠な配合飼料のほとんどは輸入に依存しており、飼料価格の高騰が酪農経営に与える影響は計り知れません。生乳生産の抑制に取り組んでいるにもかかわらず、飼料価格の高騰によるコスト増加分は価格転嫁できていません。さらに、初生子牛価格の暴落などにより所得が激減し、生産現場の経営努力のみでは対応しきれない状況にあります。食料・農業・農村基本法が規定する食料安全保障は、大きな危機に直面しています。

この問題は消費者にとっても他人事ではなく、国による食料の安定供給への速やかな支援が必要不可欠です。食料は、人間の生命の維持に欠くことができないものであり、健康で充実した生活の基礎として重要なものです。国内の農畜産業の生産の増大を図り、全ての国民が、将来にわたって、安全・安心で良質な食料を適正な価格で入手できるようにすることは、国の基本的な責務です。

私たちは国に対し、持続可能な国内農畜産業を確立し、全ての国民への食料の安定供給を確保し、食料安全保障体制の強化を実現するために、危機的な状況にある国内の畜産農家・酪農家にとって即効性のある施策の実施を強く求めます。将来にわたって消費者のいのちとくらしを守り、それを支える食と農の持続的な関係づくりを通じて持続可能な社会を目指す立場から、下記の意見を申し述べます。


1.畜産農家・酪農家の声に、しっかりと耳を傾けた緊急支援策を求めます

これまで、私たちは生産者と消費者が同じ生活者としてお互いのくらしを支え合い、昨今の畜産・酪農経営が圧迫される厳しい情勢も共有しながら、提携の強化に努めてきました。しかし、今の価格高騰による経営や家計への影響は、これまでの支え合いの努力だけでは解決が図れません。国として生産と消費の両面から国民の声を聴き、喫緊を要する生産資材・エネルギー価格の高騰に対する生産現場への緊急支援策および食料の適正価格に関する国民理解の促進に向けた対策を講じ、推進してください。

2.畜産・酪農経営の危機を打開するため、早急に配合飼料価格高騰対策を講じてください

現在、国内の畜産農家・酪農家は、 国際的な飼料価格の高騰、原油価格の高騰による輸送費の増大などで生産コストが増加し、もはや一刻の猶予も許されない経営危機に直面しています。この状況下で、畜産経営の持続的発展と国産畜産物の安定供給を図るためには、早急な対策の実施が必要です。飼料価格が高止まりした場合に機能しない現行制度を抜本的に見直すとともに、配合飼料価格の高騰に関するあらゆる対策を講じることを強く求めます。

3.国内の畜産・酪農経営の安定に資する食料自給率向上への抜本的な対策を講じてください

食料供給の観点から、国内で畜産物を生産することは、輸送障害や他国との競合などのリスクが低く、より安定的で持続的な供給が期待できます。そのためには、輸入に依存した食料生産現場の実態や食料自給率の引き上げの対策について、国民に広く情報発信してください。同時に、国内飼料自給率の向上を目指し、地域の実態を踏まえた耕畜連携の取り組みや、未利用資源の活用をさらに推進するため、水田などを利用した飼料作物の生産拡大に向けた支援対策の充実・強化を求めます。

以上

本件に関する連絡先:東都生協 組織運営部(TEL 03-5374-4751)