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2023.01.31

敵基地攻撃能力の保有に反対する意見書を内閣総理大臣宛てに提出

東都生協は2023年1月31日、憲法違反の敵基地攻撃能力の保有に反対する意見書を内閣総理大臣宛てに提出しました。

政府は2022年12月16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有やそのための防衛費の大幅増額を柱とする外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」、いわゆる安保3文書の改定を閣議決定しました。

相手国の領域を直接攻撃する敵基地攻撃能力の保有は安全保障政策の大転換となりますが、政府はこれまで「平時から他国を攻撃するような兵器の保有は、憲法の趣旨とするところではない」との憲法解釈を繰り返して示し、敵基地攻撃能力の保有は憲法上許されないとしてきました。

意見書では「憲法の恒久平和主義の原理を損ない、憲法第9条に基づく専守防衛を踏み越え、武力行使の歯止めをなくして戦争する国家へと大きく変容させる」「戦後の安全保障政策の大転換を国民や国会にも諮らず政府の一存で行うことは、立憲主義や国民主権を無視するもので断じて許されない」とし、いのちとくらし、平和を守る東都生協としての立場から安保3文書改定の閣議決定に強く反対し、撤回を求める内容としています。

[意見要旨]
1.敵基地攻撃能力の保有は憲法違反です
2.いのちとくらし、平和を脅かし、戦争への危険を高めます
3.安保3文書の閣議決定に強く反対し、撤回を求めます


提出した意見書の全文は以下の通りです。
東都生協が提出した意見書全文(PDFが開きます)

2023年1月30日

内閣総理大臣 岸田 文雄 様


東都生活協同組合
理事長 風間 与司治


憲法違反の敵基地攻撃能力保有に反対します


私たち東都生活協同組合は、東京都を中心に25万余の組合員がいのちとくらしを守るために、全国の生産者と共に持続可能な社会の実現に向けて活動する消費生活協同組合です。私たちは「平和なくして生協なし」を合言葉に、他生協や団体とも連携して平和の取り組みを進めてきました。

貴政権は2022年12月16日、敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有やそのための防衛費の大幅増額を柱とする外交・防衛政策の基本方針「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」、いわゆる安保3文書の改定を閣議決定しました。

敵基地攻撃能力は相手国の領域を直接攻撃する能力であり、政府はこれまで「平時から他国を攻撃するような兵器の保有は、憲法の趣旨とするところではない」との憲法解釈を繰り返して示し、敵基地攻撃能力の保有は憲法上許されないとしてきました。

こうした戦後の安全保障政策の大転換を、国民的議論や国会審議もないまま政府の一存で行うことは、立憲主義や国民主権を無視するものとして断じて許されません。私たちは、いのちとくらし、平和を守る立場から、安保3文書の閣議決定に強く反対し、撤回を求めます。

1.敵基地攻撃能力の保有は憲法違反です

安保3文書では、相手国の領域を直接攻撃できる反撃能力の保有を明記しています。政府は相手国からの攻撃の「着手」があれば行使可能としながら「着手」の判断基準を示さず、「着手」の正確な認定は困難であることから、憲法にも国際法にも違反する先制攻撃となりかねません。しかも、攻撃対象も限定しておらず、相手国のさまざまな拠点や施設などが目標となる可能性があります。

日本が過去に行った植民地支配と侵略戦争への深い反省から、日本国憲法は徹底した恒久平和主義を原理とし、憲法第9条で一切の戦争と武力行使・武力による威嚇の放棄、戦力不保持、交戦権の否認を定めています。歴代政府は憲法第9条の下で「専守防衛」を安保政策の基本方針とし、保持する戦力を自衛のための必要最小限度にとどめ、自衛権の行使が憲法上許される場合を限定してきました。その上で、相手国の領域に直接的な脅威を与えるような攻撃的兵器の保有は自衛のための必要最小限を超えるため許されないとする憲法解釈を確立してきました。

安保3文書では、敵基地攻撃のために主に相手国の射程圏外から攻撃可能なスタンド・オフ・ミサイル(長距離巡航ミサイル)の導入が明記されています。これは歴代政権が自衛のための必要最小限度を超えるため保有を禁じてきた攻撃的兵器にほかなりません。「自衛のための必要最小限度」を超える敵基地攻撃能力の保有を認めることは専守防衛を逸脱し、先制攻撃への道を開くものであり、前文に恒久平和主義を掲げ、戦争放棄と戦力不保持をうたい、海外での武力行使を禁じた日本国憲法に違反することは明らかです。

2.いのちとくらし、平和を脅かし、戦争への危険を高めます

敵基地攻撃能力の保有は、憲法をないがしろにするだけではありません。2015年に多くの国民の反対を押し切って成立した安保法制が施行されている現状では、集団的自衛権の行使などを通じて日本が戦争当事国になる危険が拡大しています。安保法制下で日本が敵基地攻撃能力を保有した場合、日本に対する武力攻撃が発生していなくても、日本と密接な関係にある他国のために用いられて戦争に突入する危険性が一層高まります。

個別的自衛権の行使にせよ、集団的自衛権の行使にせよ、相手国の領域を直接攻撃することは、相手国からの報復攻撃を呼び込み、再び日本に戦争の惨禍をもたらすことになりかねません。ロシアによるウクライナ侵略では核施設への攻撃が現実の脅威となっているように、原発が多数立地する日本は、壊滅的な被害を受ける可能性があります。

他国を直接に攻撃することができる軍事力を保有することになれば、戦争の抑止にはつながらず、周辺諸国との緊張を高め、力対力の危険な軍拡競争の悪循環に陥るのは明らかです。政府は武力に依拠することなく、平和憲法の理念を生かした平和外交を通じて国際社会で主体的な役割を果たし、近隣諸国との武力紛争の未然防止と世界平和の実現に向けて力を尽くすべきです。

安保3文書には、敵基地攻撃能力を保有するために今後5年間で現行計画の1.6倍となる総額43兆円もの防衛費の大幅増額が明記されました。政府は防衛費増額の財源として約1兆円を増税で確保するとしています。日本はすでに世界有数の軍事力を有しており、コロナ禍や物価上昇で多くの国民が苦しむ中、防衛増税に対して国民の納得は得られているとはいえません。

コロナ禍、ロシアによるウクライナ侵略に端を発して日本の食料や資源、エネルギーを巡る脆弱性が露呈し、多くの国民が不安を感じています。莫大な防衛費は、安全保障の要として日本の食料・農業を守る食料安全保障やエネルギー自給率の向上、気候変動対策、環境保全など、国民のいのちとくらしを守るための予算に転換するべきです。

3.安保3文書の閣議決定に強く反対し、撤回を求めます

私たちは2014年以来、憲法解釈を変更して集団的自衛権行使を容認する安保法制に対して、憲法が定める恒久平和主義に違反し、立憲主義・国民主権を否定するものとして強く反対してきました。

敵基地攻撃能力の保有は、安保法制と同様に憲法改正手続きを潜脱し、憲法の恒久平和主義の原理を損なうものです。憲法第9条に基づき自国領域内での武力行使に限る専守防衛を踏み越え、武力行使の歯止めをなくして戦争する国家へと大きく変容させることになります。また、すでに世界有数の軍事力を有する日本の防衛費を大幅に増やし、国民に大きな負担を強いるものです。

日本の平和国家としてのありようを根底から覆すこのような重大な変更を、国民的議論や国会審議を経ずに閣議決定のみで行うことは、立憲主義・国民主権を無視するものとして断じて許されません。私たちは、いのちとくらし、平和を守る立場から、安保3文書の閣議決定に強く反対し、撤回を求めます。

以上