プレスリリース

報道各位
2011.09.13

政府に対し放射性物質被害に関する要望書を提出

東都生協と東都生協産直生産者団体協議会は9月13日(火)、政府の原子力災害対策本部 本部長・野田佳彦内閣総理大臣に対し「福島第一原発事故に伴う放射性物質被害に関する要望書」を提出しました。

今回の福島第一原子力発電所事故による広範囲にわたる放射性物質の拡散が、環境や農畜水産物、人体を汚染していることを重視し、いのちとくらしを守る運動を進める立場から、食の安全・安心と日本の農畜水産業の確固たる基盤づくりを求め、正確な情報提供、暫定規制値の見直し、汚染対策、万全な保障などを求める内容としています。

2011年9月13日

原子力災害対策本部 本部長
内閣総理大臣 野田 佳彦 様

東都生活協同組合
理事長 庭野吉也

東都生協産直生産者団体協議会
会長 椎名二郎
(農事組合法人房総食料センター 副理事長)


福島第一原発事故にともなう、放射性物質被害に関する要望書



【要望趣旨】

3月11日に発生した福島第一原子力発電所の事故では、外部電源及び非常用電源の喪失にともなう冷却材喪失、炉心溶融、水素爆発が引き起こされ、高濃度の放射能が環境に放出されました。そして、いまだに水蒸気爆発の可能性を含めた危機的状況が続いています。また、放射性廃液を海に放出したことによる海洋汚染は、日本全国、将来的には、広く太平洋に被害が拡散することが危惧されます。

福島県内の原子力発電所事故の影響は、今後、相当長期間にわたり、国民は放射能と向き合って生活せざるを得ません。すでに5ヵ月以上も、放射性物質が広範囲にわたり拡散・降下し、大気・土壌・海洋を汚染し、農産物や近海の魚介類などが汚染され、日常的に放射性物質が検出されるという異常事態が継続しています。

政府は、放射性物質が大気や海洋に放出しても「拡散されて薄まる」とし、「直ちに健康への影響はない」「冷静な対応を」と国民に繰り返し説明を行っていますが、不安を解消する根拠には、ほど遠いのが実態です。

20万世帯の組合員で組織される東都生協と、食卓に安全・安心な農畜産物を提供するために努力を惜しまない東都生協産直生産者団体協議会に加盟する118団体は、今回の福島第一原子力発電所事故による広範囲にわたる放射性物質の被害と、農畜産物、魚介類、食品、そして何よりも人体を汚染していることを重視し、いのちとくらしを守る運動をすすめている立場から、食の安全・安心と日本の農畜水産業の確固たる基盤づくりを求め、以下のことを要望します。

【要望事項】

一、国および東京電力は、原子力発電所事故後の現状と、汚染が及ぼす国民の健康・環境への影響について、分かりやすく、偽りのない正確な情報の提供を行うこと。

・国は、もっと遺伝学・生物学・防護学や健康問題を研究してきた専門家の意見に耳を傾け、健康被害に関する情報収集・分析を強化し、検出された各種の放射性物質のリスクについて丁寧に説明し、国民の内部被曝の不安にも応えることが不可欠です。

一、今回の事故に関する国民への健康調査・管理に万全を期し、将来的にも継続的に実施する方針を打ち出すこと。また、放射性物質の暫定規制値について見直しをすすめること。

・放射性物質に汚染された食品による将来的な健康影響を重視し、影響が成人よりも強いと指摘される乳幼児や妊産婦について、安全性への強化策を早急に整備する責任があります。

・また、放射性物質が広範囲にわたり拡散した状況から5ヵ月が経過し、食品などの放射性物質の検出数値にも低下傾向が伺える実態を踏まえ、国民の不安を払拭する厳しい規制値の設定を早急に採用することが責務です。

一、大気だけでなく水、土壌、農畜産物、水産物、さらに有機生産資材等、きめ細かな測定・調査を行い、汚染状況とそれへの対処法を迅速に公表すること。また、除染した後の汚染された物材の廃棄方法と廃棄場所を早急に明確にすること。

・国は、安全な農産物を消費者に届けるためにも、放射性物質の汚染によって被害が出た圃場の除染作業について、早急に明確な方針と指示を示すことが急務です。

・生産する農家にとっては、再生が困難な状況の場合における補償措置を講じること、とりわけ、暫定規制値を超過して放射性物質に汚染された稲わら、牧草、堆肥などについて、これらの保管、管理と処分方法、財政措置に関する指針を早急に示すことが求められています。 これらは、日本の大地から安全・安心な食料を確保するために必要な措置です。

一、国および東京電力は、国の出荷停止措置以外と生産者の出荷自粛も含めた万全な補償や融資制度の拡充、体制整備や財政措置を行うことを宣言し、賠償金の全額早期支払いを実現すること。

・都道府県単位で異なる牛肉の出荷制限、出荷自粛、全頭検査、全戸検査など、対応に差が生じていることにより、牛肉の消費が不安定となり相場の下落を招いています。国および東京電力は、統一した対応を示すことが重要です。

・「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」において、「中間指針に明記されない個別の損害が賠償されないということのないよう留意されることが必要である。」としているとおり、経営不安に陥っている肉牛肥育農家に対して、子牛や廃用牛も含めた、肥育管理および飼料代など、国として統一した支援を行う責任があります。

一、少なくとも暫定規制値を超えた食品、資材が国民の手元に届かないように、国主導の賠償措置を講じた出荷停止などの明確な被害防止対策を徹底しながら、全ての自治体における放射性物質の検査機能を高めるために、国および東京電力は、検査機器と検査体制を早急に確保すること。

・今般、農林水産省では「高濃度の放射性セシウムが含まれる可能性のある堆肥等の施用・生産・流通の自粛について」、「放射性セシウムを含む肥料・土壌改良資材・培土および飼料の暫定許容値の設定について」の通知を自治体に発出し、これ以上の土壌汚染を起こさないこと、規制値超過の野菜が栽培されないように、国として対策を講じる責務があります。

・また、暫定規制値を超過した牛肉、腐葉土などが国民の手元に流出したことは、国の安全管理のずさんさを示しています。国は、再発防止に向けた確固たる対策を打ち出し、国民の生命や生活上の安全・安心の確保を最優先に、必要に応じた全量・全品検査の実施、そのための分析機器の整備や人員の確保など体制整備を図ることが不可欠です。

一、国の登録検査機関のみならず民間検査機関の費用も含めて、国および東京電力が全額負担する措置を行うこと。

・「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」において、「同指示等に基づくものではなく、取引先の要求等により検査の実施を余儀なくされた場合は、後記第7(いわゆる風評被害について)の損害となり得る。」としているとおり、国民の不安に応え、安全・安心を担保するために民間(産地および食品製造工場など)が実施した全ての検査費用および放射性物質測定の費用は、国が負担する責任があります。

以上