東都生協の方針・考え方

東都生協 食育推進政策
-食と農、未来につなぐ食育のちから-

 今、「食育」が各方面で話題になっています。その背景には食、食生活、健康、教育、農、などへの不安とだからこその関心があると思われます。そういう状況の中だからこそ東都生協として、「食育」をどう捉えるのか定義をはっきりさせる必要があります。「食育」はこれが正しい定義というものはなく、どう定義付けるかは、その団体の思い、姿勢を表すことにほかならないからです。
 「食と農を事業と運動の基軸におきます」を個別理念に掲げている東都生協にとって、食育の取り組みは大きな柱です。東都生協ならではの、食育の取り組みが求められています。
 私たちは、安全で良質な食べ物を食べたい、次世代にも受け継ぎたいとのおもいから、生産者・メーカーと手をつなぎ「食」に正面から取り組んできました。これまでの東都生協の取り組みを改めて振り返りながら(添付資料参照)、東都生協の食育の捉え方、視点を確認し、以下のとおり東都生協が進める食育政策を明確にいたします。

1.東都生協が進める食育政策

(1)一人ひとりが持つ食育のちからを発揮していきます

 食べることは生きること、一人ひとりが食に興味や関心をもち、食に対して主体的に向き合い、食をとおして生きる力を存分に発揮して、健康な心と体を育むことが食育です。
 しかし、生活環境の変化の中で食育の力が十分に発揮できない状況にあります。本来、一人ひとりの体内に備わっている食育の力を存分に発揮できるように支援していく取り組みが求められます。
 私たちは、健康な心と体を育んでいくために、生産現場での学びや体験を重点において、食の知識やスキルを身につけ、食べることの大切さや楽しさを実現していく食育活動をすべての世代に対して積極的に推進していきます。

(2)農から学ぶ食育を積極的に推進します

 いのちの源である農業や水産業に触れ、学んでいくことで、自然環境の中で生命を育むことの尊さや、その生命を頂くことのありがたさを実感していきます。地域の伝統的な食文化などに触れることで食の大切さや楽しさを子供たちや大人にも感じてもらうことができます。さらには、食べものを生産する人との交流により生産の苦労や生産における工夫や技術、環境との共生、地域の伝統文化など生きた情報を学んでいきます。
 このように、農から学ぶ食育を基本にしながら、食の知識やスキルを身につけ、食生活における改善をはかり、食に対して主体的に向き合う姿勢を育んでいくことで、食と農の双方向的なコミュニケーションをつくりあげていきます。このことは、産直事業を持続・発展させていくための基礎的条件になりますので、活動と事業の両面からの積極的な推進を図ります。

(3)人と人とのつながりを大切に活動を進めます。

 私たち生活協同組合は、人と人とがくらしや商品をつうじてつながり、助け合いや学びを実現できる場です。食をテーマにして自由につながりながら、おしゃべりや体験を積み重ねていくことで食育を身につけていくことができます。生協はそうした地域の自主的な活動の場の広がりを大切にしながら、専門性をもった食育推進のサポートをしていきます。

(4)食育活動と商品活動をしっかりつなげていきます。

 商品活動は組合員自らが商品づくりに参加することにより、生産現場のこと、食材や表示の知識、調理方法など食の知識やスキルを主体的に学ぶことができる絶好の機会です。多くの組合員が商品活動に参加していけるような活動スタイルをつくっていくことで食育活動を推進していきます。
あわせて、食育の運動と商品利用普及や商品開発をしっかりと連携させることで事業効果を高めていきます。
 商品案内をはじめとした情報発信も食のスキル向上や食文化への理解に重要な役割を果たします。組合員の信頼が高まる正確で客観的な情報提供はもとより、生産現場と直接繋がっていることのメリットを最大限に生かした独自の新鮮な情報提供を推進していきます。あわせて、家庭でできる食育活動を多様な切り口で応援していきます。

(5)食育の推進体制を構築し、多様な展開と広がりを作ります

 食育活動を着実に推進していくために「食育推進協議会」を設置します。地域で自主的に進められる食育活動のサポートや活動の共有化につながる広報活動の充実、独自の食育活動プログラムの企画づくりから実践まで食育に関わる活動の推進機能を果たします。特に、取り組み結果の検証と見直しに重点をおいて多彩な活動を積極的に展開していきます。
 そうした食育活動の支援体制として、食育リーダーの養成を図ります。組織としての多彩な活動が広がりをもって活発に展開されていくためには、専門性を有しながら支援していくリーダーの存在は欠かせません。
 あわせて、食育に関わる他の組織や個人、専門家ともできる限り共同を図りながら、地域や社会の中でより効果的な食育の展開をめざします。

2.東都生協の食育推進プログラム

 東都生協の食に関する活動の歩みを振り返り、政策的とりまとめをしてみると、あらゆる面で食育の活動と連動しながら進められてきたことが再確認できます。今後東都生協が食育のプログラムをすすめていくためには、作る体験と学ぶ体験から得たものを、さらに継続性を持たせ、仲間をつなげていくように強化しながら具体化していく必要があります。食と農を運動の基軸におく東都生協ならではの、他に先駆けて実践する食育を、生産者・組合員・職員の協同のもと推進していきます。

(1)作る現場を知り、確かめる活動

 ブロックや支部で気軽に取り組みです。生産現場を見て、生産者と交流することで、お互いが理解を深め、農への関心を高め、顔の見える産直を実感していきます。たんなる交流や収穫体験に終わらせないために、産地や生産物の学習資料を提供して産地訪問の目的を明確にし、得たことを帰ってからの活動にいかせるツールを提供していきます。
 また、「公開監査」の内容の充実をはかるとともに、多くの組合員が参加して産地の取り組みを確認できるしくみにしていきます。監査人の対象を広めていくことも必要です。

(2)作る現場を体験する活動

 農作業を体験する取り組みです。農作業をともにすることで作ることの苦労や喜びを少しでも感じとり、生産物をたいせつに感謝して食べることと日本の農業の現状を理解します。また、産地が抱えている後継者不足などの深刻な問題や日本の農業事情を知るきっかけとし、消費者として何ができるかを考えていきます。

(3)生産者やメーカーから学ぶ活動

 生産のこだわり、食の流通経路などを総合的に学習します。学ぶというスタンスをしっかりとして、相互理解を深めていきます。産地にも取り組みの目的を明確にして、内容の充実をはかります。また、じっくり本音で語り合い、充実した交流の場も設定します。

(4)食を伝える活動

 「食べること」に関心を持ち、日本における食の歴史、形態などを学びながら、現在の食生活を省みて考えるきっかけをつくります。日本型食生活提案などを、栄養面やバランス面を考え、具体的に料理して味わうことから進めていきます。また、日本の四季の変化をいかした旬の食材をおいしく食べることも知らせていきます。そのために東都生協の産直や商品政策を理解し、商品を上手に利用していくクッキングリーダー的な人材を育成します。

(5)子どもたちの活動

 未来を担う子どもたちに「食べることは、いのちを育むこと」だということを実感してもらいます。子どもたちが「食べること」に関心をもち、食についても興味をもつように家庭の中でも食の話題づくりをしていきます。自分で見て、聞いて、においをかいで、触れて、味わうなど五感で確かめ、ともに料理して、会話をしながら「食べること」を楽しみ、自分の体を大切に思う人を育てていきます。また、産地を知ることで、自然や環境の大切さを感じさせます。

(6)食や農、環境について学ぶ

 日本の農業がおかれている現状を学びます。課題を政策に転化して取り組んでいくためのリーダー層の育成もめざしていきます。サマースクール・短期講習などのように、いろいろなジャンルの講座を設置して、楽しみながら学習したり、より専門的な知識と政策推進のノウハウを習得していきます。大学とのタイアップ、専門家、学識経験者など多彩な講師による楽しんで学べる環境づくりもしていきます。

(7)商品活動

 東都生協が取り扱う商品を知ります。安全・安心・おいしさを組合員自らが確認して、伝えていけるようにします。さらに、意見を出して、より利用される商品にしていきます。自分たちのほしい商品を、組合員自らがいろいろな場面でかかわりながら作り上げていくことで、消費者意識を育て、消費者運動へとつなげていきます。

(8)作る現場を応援する活動

 ともに歩んでいく産地や生産者に、生協や組合員が応援できることを考えていきます。土づくり基金のより有効な運用も考えていきます。応援、協力できる内容を時代に即して対応させていくことや、消費者としての応援から生産現場にかかわっていく人材の育成も必要です。