東都生協の方針・考え方

原子力発電に対する東都生協の考え方

私たちは食と農、いのちとくらしを守る立場から、原子力発電からの撤退と再生可能エネルギーへの転換を国に求め、持続可能な社会づくりを進めます。

 2011年3月に発生した東京電力福島第1原子力発電所事故は、10年が経過した今も収束せず、高濃度の放射性物質を含む汚染水が増え続けています。史上最悪レベルの原発事故で放出された大量の放射性物質は、土壌や海洋、大気に拡散して環境を汚染しました。被災地とその周辺地域での放射性物質の低減対策への努力にも関わらず、農畜水産物の価格低迷と買い控えが継続しています。

 政府は2021年4月、多核種除去設備・ALPS(アルプス)処理水を海洋放出する方針を決定しました。処理水の約7割には、トリチウム以外の放射性物質が法定基準を超える濃度で残存しているとの情報もあります。海洋放出はくらしや環境、地域経済への重大な影響が懸念され、被災地の復興への努力を無にするものとして断じて容認できません。地元をはじめ国民的論議を通じて民主的な合意形成を図り、近隣諸国や国際社会の理解が得られる処理方針を策定するべきです。

 政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする脱炭素社会を宣言しました。2021年7月に公表したエネルギー基本計画の改定案では、2030年度の電源構成比で再生可能エネルギーを36%~38%に引き上げました。一方で原発を「重要なベースロード(基幹)電源」と位置付けて20~22%を維持し、「必要な規模を持続的に活用」として、脱炭素の名目で推進しようとしています。

 福島第1原発事故では、技術や管理体制が未確立なまま、地震国・火山国の日本で原発を稼働させることの重大な危険性が明らかになりました。重大事故対策や避難計画に問題が指摘される新規制基準の下で原発を再稼働させる動きが強まっています。放射性廃棄物の処理・処分も見通しが立たない以上、原発からは速やかに撤退する以外にありません。地球温暖化対策として化石燃料からの脱却による脱炭素化が急務であることからも、省エネルギーと再生可能エネルギーを推進する必要があります。

 

 私たちは設立以来、いのちとくらしを守るため、食と農を事業と運動の基軸に置き、持続可能な生産と消費の関係づくりに取り組んできました。生産者と消費者が手を携えて生産・流通・消費の在り方を問い直し、食の安全・安心を次世代に継承する食の未来づくりを進める立場から、人と自然が調和した持続可能な社会と地球環境に向けて、エネルギー問題に対する中長期的な考え方を示します。

  1. 国に対して、原発からの撤退と化石燃料依存からの脱却、再生可能エネルギーの拡大を求めます

    1. 全ての原発を老朽化またはリスクの高い施設より廃炉にし、運転期間の延長や再稼働、新増設、建て替えは行わず、原発から速やかに撤退すること。
    2. 原発の廃炉に至る過程では、放射性廃棄物の処理・処分、プロセスを含めた管理について安全対策を抜本的に強化し、徹底した情報公開を行うこと。
    3. 核燃料サイクルから撤退して使用済み核燃料の再処理を中止し、将来にわたって安全な放射性廃棄物の処分方法を確立すること。
    4. ALPS(アルプス)処理水の海洋放出方針を撤回し、地元をはじめ国民的論議を通じて民主的な合意形成を図り、近隣諸国や国際社会の理解が得られる処理方針を策定すること。
    5. 再生可能エネルギーの主力電源化に向けた具体的な施策を求めるとともに、発電設備の設置に当たっては地域住民との合意と協力、自然・生活環境の保全を最優先すること。
    6. 所有権分離など発送電の完全分離により送配電網の中立性を確保し、再生可能エネルギーなど地域の分散型電源を優先して利用できるように広域的な送配電網の整備を進めること。
    7. 再生可能エネルギーの普及を妨げ、原発や石炭火力を温存する容量市場、ベースロード市場、非化石価値取引市場は廃止を含めて制度設計を見直し、公正で透明な競争環境を整備すること。
    8. 電源別発電コストを適正に試算・公開し、全ての小売電気事業者に電源構成の公開・表示を義務付けること。託送に関係ない原発コストの託送料金への転嫁をやめ、料金の透明性を確保すること。
    9. 石炭火力発電は2030年ゼロを目指すとともに、温室効果ガスの排出量・削減量を可視化し、消費者が脱炭素化に資する商品・サービスを選択できる環境整備を進めること。
    10. エネルギー問題について国民に分かりやすく徹底した情報公開を行い、国民がエネルギー政策形成過程に積極的に参加でき、国民の意見が反映させる開かれた仕組みを作ること。
    11. エネルギー使用量削減やエネルギー効率の改善など省エネルギー政策を強化し、脱炭素社会に向けた具体的な道筋を明らかにすること。
  2. 安心して暮らせる持続可能な社会の実現に向けて行動します

    1. 原発に依存しない再生可能エネルギー電気事業者と提携して、再生可能エネルギー比率が高く、電力生産者の顔が見える電力の利用普及を進めます。
    2. 事業と活動を通じ、太陽光発電設備の普及や身近な節電活動、省エネルギーと環境に配慮した健康で快適なくらしづくりを組合員に提起します。
    3. 事業活動での施設への太陽光発電設備の設置や再生可能エネルギー電力への切り替え、温室効果ガスの削減、省エネルギー機器の導入、節電・省資源対策を推進します。
    4. 地球環境の保全と持続可能な生産と消費に向けて、国産、環境、資源循環、ごみ削減に配慮した商品・サービスを普及するとともに、3R活動など循環型社会を目指した取り組みを進めます。
    5. 遊休農地を活用した太陽光発電や営農型太陽光発電など産直産地での再生可能エネルギー生産、電気事業者・他団体との連携した取り組みについて研究・検討を行います。
    6. 原発やエネルギー問題、最新の省エネルギー技術に関する系統的な学習と意見交換の場を設け、家庭での省エネルギー・節電の取り組みを進めます。
    7. 地域での再生可能エネルギー普及の取り組みに、生産と消費を結ぶ東都生協として、組合員・生産者・職員が協同して積極的な役割を果たしていきます。

以上

制定 2012年 1月26日
改正 2021年10月 21日